袋地の売却方法とは?売却が難しい理由・高く売るためのポイントを解説
袋地(ふくろち)は不動産市場では「売却が難しい」、「買い手が見つかりにくい」とされています。
この記事では、袋地の基本的な意味から、売却が難しいとされる理由、四つの売却方法、相場の考え方、高く売るためのコツ、よくある質問まで詳しく解説します。
1.袋地(ふくろち)とは

袋地とは、周囲を他人の土地に囲まれていて、公道に接していない土地を指します。
このような土地は一般に「無道路地」とも呼ばれ、建築基準法に定められた接道義務を満たさないことから、不動産取引においては「再建築不可物件」として売れにくいとされています。
なお、袋地には囲繞地通行権という権利が認められており、袋地の所有者は周りを囲む土地(囲繞地)の一部を通路として利用して外に出られますが、通行には原則として通行料を支払うと規定されており、また、通行以外の利用などに制約があるため、売却においても通常の土地と比べてハードルが高くなる傾向にあります。
囲繞地については以下の記事もご覧ください。
2.袋地の売却が難しいとされる理由

なぜ袋地の売却は難しいとされているのか、その理由を解説します。
- 接道義務を満たしておらず再建築不可になる
- 住宅ローンの審査が通りにくい
- 通行やライフライン設備の設置の際に隣地の協力が必要になる
- 日当たりや風通しが悪い
- 防犯上の不安がある
- 災害時の対応が遅れやすい
(1)接道義務を満たしておらず再建築不可になる
袋地が売却しにくいのは、建築基準法上の接道義務を満たさない点にあります。
建築基準法第43条第1項では「建物の敷地は幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならない」と定められていますが、袋地はこの規定を満たせません。
そのため、袋地に建つ既存の建物を取り壊した後、新しい建物を建て直すことは原則としてできません。
買主にとって「将来建て替えができない土地」というのは大きなマイナス要素であり、よほどの理由がない限り購入しにくいといえます。
(2)住宅ローンの審査が通りにくい
再建築不可物件である袋地は、住宅ローンの担保評価が低く設定される傾向にあります。
金融機関は貸し付けた住宅ローンの回収ができなくなった場合に備えて、物件に抵当権を設定するのが一般的ですが、袋地は再建築ができないため、売却時の価値がきわめて低くなります。
もし再建築不可であることを納得したうえで袋地を購入したいという買主が見つかったとしても、ローン審査が通らず契約が成立しない可能性が高いです。
ローンの審査が通らない場合には、現金一括で購入できる買主に限定されますので、市場での流動性が大きく下がってしまいます。
(3)通行やライフライン設備の設置の際に隣地の協力が必要になる
袋地で生活するためには、公道に出るために隣地を通行する必要があるうえ、電気・ガス・水道などのライフライン設備の引き込みにも隣地の協力が欠かせません。
法律上は囲繞地通行権や民法第213条の2に基づく設備設置権が保障されていますが、実際の運用には隣地所有者との協議が必要となります。
このように、通行料の発生やライフライン設備の設置のたびに囲繞地の所有者と話し合いが必要であるなど、買い手にとってリスクや面倒ごとが多い土地といえます。
(4)日当たりや風通しが悪い
袋地は周囲を建物や塀に囲まれている構造であるため、日当たりや風通しが悪い傾向が見られます。
特に四方を建物に囲まれた袋地では、昼間でも室内が暗く、湿気がこもりやすいといった生活面のデメリットが避けられません。
住宅としての快適性が低くなるため、自宅としての購入を検討する買主層からは敬遠されやすいでしょう。
(5)防犯上の不安がある
袋地は公道から見通しが効きにくく、防犯面での不安を覚える人も多いです。
通行人の目が届きにくいため、空き巣被害などのリスクも通常の整形地に比べると高まる可能性があります。
また、袋地の敷地内に高い樹木や高い塀がある場合にも死角になりやすく、セキュリティ面で一定のデメリットがあります。
(6)災害時の対応が遅れやすい
袋地は道路に直接面していないため、火災や急病などの際に消防車・救急車が現場まで近づけないリスクがあります。
幅の狭い通路を使って救助などを実施するため、初期対応に遅れが生じる懸念もあるでしょう。
特に防災面への意識が高まっており、このことも袋地が売れにくくなっている要因の一つです。
3.袋地を売却する方法

袋地の売却は不可能ではありません。
- 囲繞地の所有者へ売却する
- 隣地の一部を購入・等価交換して袋地を解消する
- 囲繞地と共同売却する
- 専門の買取業者へ依頼する
自身の状況や袋地の立地に合わせて、最適な方法を選びましょう。
(1)囲繞地の所有者へ売却する
袋地と接している囲繞地の所有者へ売却する方法があります。
囲繞地の所有者が袋地を買うことにより、土地の形が改善したり、土地の規模が大きくなることで建築できる建物の規模や用途が広がったりすることで、所有する囲繞地の価値を大幅に上げられるメリットがあります。
そのため、一般の市場では買い手が見つかりにくくても、囲繞地の所有者にとって袋地を購入することが合理的な場合があります。
しかし、このケースは、囲繞地の所有者に袋地を購入する意思があることが前提となり、そうではない場合には交渉を進めることは難しいのです。
(2)隣地の一部を購入・等価交換して袋地を解消する
隣地の一部を購入したり、等価交換して袋地の状態を解消する方法もあります。
袋地の問題点は公道に接していないことであり、これを解消できれば通常の土地としての売却が可能になります。
費用や手間はかかるものの、結果的に売却できることで現金化が可能になるため、長期的な視点で売却を検討する場合には有効な手段です。
ただし、隣地所有者の合意が前提となるのはもちろんのこと、一定程度の金銭が必要になることが多いため、購入資金の準備や、双方にメリットのある提案ができる状況であることが条件になります。
(3)囲繞地と共同売却する
囲繞地の所有者と協力し、袋地と囲繞地をまとめて売却するという選択肢もあります。
両者を合わせて売却すれば、買主にとっては活用しやすい土地になる場合があり、囲繞地単独での売却よりも好条件での売却が期待できる可能性があります。
ただし、囲繞地所有者に売却の意思があることが前提となり、また、売却価格の配分・売却時期・仲介会社の選定など、両者の合意が必要となる事項が多いため、重要な点は事前に合意しておき、できれば合意した内容を書面で交わしておくとよいでしょう。
(4)専門の買取業者へ依頼する
「とにかく早く売却したい」、「隣地所有者との交渉が難しい」というケースでは、専門の買取業者への依頼がおすすめです。
買取業者への依頼は仲介による売却と異なり、現金化までのスピードが早いのが特徴です。
仲介での売却と比べると価格は相場より安くなるケースが多いものの、もともと購入希望者が見つかりにくい袋地の買主探しの長期化リスクを回避できます。
相続で取得した袋地を整理したい場合や、急いで現金化したい事情がある場合には、まず買取業者へ相談してみましょう。
4.袋地の売却相場の考え方

袋地の売却相場は、立地・面積・通行権の整備状況などによって大きく変動します。
具体的な目安と、相場が下がりやすい要因について確認していきましょう。
(1)一般的な土地の30%以下が目安
袋地の売却価格は、一般的な整形地の30%以下が目安とされています。
立地条件が良く、通路が確保されていて再建築の見込みがある場合はそれ以上になる可能性もありますが、それはまれなケースです。
一般的な袋地は再建築ができず、通行関係の権利も整理されていないことが多く、その場合は立地が良くても30%程度になるケースが多いですし、立地や建物の状況によっては価格がつかないこともあります。
なお、接道が一切ない場合や通路の確保が難しい場合、隣地所有者との関係が悪化しているといったケースでも、価格がつかないことがあります。
(2)相場が下がりやすい要因
袋地の相場を下げる主な要因として、以下のものが挙げられます。
- 公道に接していない
- 通路の幅が狭い
- 通行権が書面化されていない
「公道に接していない=通常の土地のように自由な出入りができない可能性がある」ことは、土地の利用価値を大きく下げます。
もちろん囲繞地通行権によって通行それ自体ができても、法律上「必要最低限の範囲」と定められているため、通行できる道幅がかなり狭く、それが土地の利用価値を下げ、価格を下げる要因になっていることもあります。
さらに、通行権についての取り決めが書面化されていないとトラブルになるリスクがあり、書面化の有無も価格に影響を与える要因となっています。
5.袋地を高く売るためのポイント

袋地は売却が難しい物件ではあるものの、いくつかの工夫を施すことで査定額を引き上げることが可能です。
ここでは、なるべく高値で売却するために押さえておきたい三つのポイントを見ていきましょう。
- 売却前に再建築できるかを検討する
- 隣地所有者との関係を確認しておく
- 袋地や再建築不可物件の取り扱い実績がある業者へ依頼する
(1)売却前に再建築できるかを検討する
袋地の価値を大きく左右するのが、再建築できるかどうかという点です。
接道義務を満たすために、隣地の一部を購入したり、建築基準法第43条第2項に基づく認定を受けたりすることで、再建築が可能になるケースもあります。
自治体に事前に相談し、再建築の可能性を確認しておくと、売却戦略の幅が広がるでしょう。
(2)隣地所有者との関係を確認しておく
袋地の売却では、隣地所有者との関係性が査定額に大きく影響します。
現状の通行料や範囲などについて、今までの取り決めを確認し、手間はかかりますが書面に残して、新所有者がスムーズに承継できるようにしておくのが理想です。
書面に残すのが難しい場合でも、後々トラブルが起こらないように隣地所有者との関係を良好にしておくことが大切です。
(3)袋地や再建築不可物件の取り扱い実績がある業者へ依頼する
袋地のような特殊物件の売却は、取り扱い実績が豊富な買取業者に依頼しましょう。
袋地や再建築不可物件の実績が豊富な買取業者であれば、仲介による売却が困難な場合でも買い取ってもらえる可能性があります。
依頼先を選ぶ際には、「袋地・再建築不可物件の買取実績」や「近隣エリア内での過去の取引事例」などを確認したうえで決めましょう。
6.袋地の売却についてよくある質問
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最後に、袋地の売却に関してよく寄せられる質問にお答えします。
- 袋地は仲介では売れませんか?
- 袋地の売却にかかる期間はどの程度ですか?
- 袋地の売却前に建物を解体したほうが売れやすいですか?
- 袋地でも再建築できる可能性はありますか?
(1)袋地は仲介では売れませんか?
袋地でも仲介で売却することは可能ですが、買主が見つかるまでに時間がかかりやすい傾向があります。
価格や立地条件にもよりますが、一般的な整形地と比べて成約までの期間が長くなることや、最悪売れないことを前提として考えておくのが無難です。
(2)袋地の売却にかかる期間はどの程度ですか?
仲介での売却の場合、6か月〜1年以上かかるケースが一般的です。
買主が限定的になりやすい袋地は、市場に出してから成約まで時間を要する傾向があります。
一方、買取業者へ依頼した場合は、最短で数週間〜1か月程度で現金化できることが多く、急ぎの売却にも応じてくれるでしょう。
(3)袋地の売却前に建物を解体したほうが売れやすいですか?
原則として、解体せずに現状のまま売却するのが基本的な戦略です。
袋地に建物が現存している場合、再建築不可であっても、建物自体は利用可能な資産として扱われるケースが多くあります。
解体してしまうと、建て替え不可の更地となり、用途が極端に限定されて売却が更に難しくなりかねません。
建物が朽廃して周辺に被害を及ぼす可能性がある場合や行政から解体するよう指導があるようなケースは別ですが、そうでない場合は安易に解体しないようにしましょう。
(4)袋地でも再建築できる可能性はありますか?
代表的な方法として、隣地の一部を購入または等価交換して接道義務を満たすほか、建築基準法第43条第2項に基づく認定を受ける方法があります。
ただし、いずれも特定行政庁や隣地所有者との交渉が必要となり、実現までには相応の時間と労力がかかるでしょうし、実現する可能性自体も低いです。
再建築の可能性を確認したい場合は、まず自治体の担当者や袋地の取り扱いに強い不動産会社に相談するようにしましょう。
まとめ
袋地は、接道義務を満たさず再建築が困難で、住宅ローンの審査も通りにくいなど、売却において複数の難点を抱える土地です。
しかし、囲繞地所有者への売却、隣地の購入や等価交換、共同売却、買取業者への依頼という選択肢から、自身の状況に合った方法を選べば、リスクの少ない形で処分することもできる可能性が高まります。
売却前に再建築ができるようになる可能性を確認し、隣地所有者との関係を良好にし、袋地に強い専門業者へ依頼するという三つのポイントを押さえておくと、納得のいく形で処分ができる可能性があります。
監修者
塚田 拓士
不動産鑑定士
新卒で東京国税局に入局し、相続税の税務調査を担当しながら不動産鑑定士試験に合格。2007年にフィンテックグローバル(FGI)に入社し、事業再生、事業承継投資やPMI等を経験したのち、不動産M&Aによる投資事業を始め、FGIの主要事業に育てた。現在は不動産M&Aや投資商品の販売を推進している。
新卒で東京国税局に入局し、相続税の税務調査を担当しながら不動産鑑定士試験に合格。2007年にフィンテックグローバル(FGI)に入社し、事業再生、事業承継投資やPMI等を経験したのち、不動産M&Aによる投資事業を始め、FGIの主要事業に育てた。現在は不動産M&Aや投資商品の販売を推進している。
