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事業承継と相続の違いとは?経営者が知っておくべき税制・手続き・トラブル対策を徹底解説

「事業承継と相続の違いは?」
「会社を子どもに継がせるときに注意すべきポイントについて知りたい」

会社の経営者のなかには、事業承継と相続について、このような疑問をお持ちの方もいると思います。

事業承継と相続は、どちらも「引き継ぐ」という意味を持ちますが、対象となる財産や承継者、タイミングなど、様々な点で異なります。

この記事では、事業承継と相続の基本的な違いから、相続対策の具体的な方法、事業承継税制の活用方法、遺留分トラブルの回避策まで、経営者が知っておくべき重要なポイントを網羅的に解説します。

円滑な事業承継の実現のために参考にしてみてください。

1.事業承継と相続の基本的な違い

事業承継と相続は混同されやすい概念ですが、本質的に異なります。

それぞれの基本的な概念について、以下の点を押さえておくことが大切です。

事業承継と相続の基本的な違い

  1. 事業承継とは
  2. 相続とは
  3. 事業承継と相続の違い

経営者として両者の違いを正確に把握することが、スムーズな会社の引き継ぎにつながります。

(1)事業承継とは

事業承継とは、経営者が自身の会社や事業を後継者に引き継ぐことを指します。

事業承継は、承継先の属性によって大きく三つに分類されます。

まずは「親族内承継」で、経営者の子や孫などの親族に承継する方法です。

早期に後継者を選定して十分な準備ができるメリットがある一方、親族間で経営権をめぐる争いに発展するリスクも存在します。

次に「親族外承継(従業員承継)」で、社内の役員や従業員に承継する方法となります。

事業をよく理解している内部の人材に事業を承継することができますが、後継者が自社株式を買い取るための資金力が必要となるでしょう。

最後は「第三者承継(M&A)」で、株式譲渡や事業譲渡により第三者に会社を売却する方法です。

買い手側の会社との交渉次第では、事業を存続できる可能性が高まる点がメリットです。

事業承継の詳細については、以下の記事もご覧ください。

(2)相続とは

相続とは、亡くなった人(被相続人)の財産を、配偶者や子などの相続人が受け継ぐことです。

「財産」には現金・有価証券・動産・不動産だけでなく、借金などの負債も含まれます。

相続は、民法によってルールが定められています。

まず、相続人になることができるのは原則は被相続人の配偶者、子、直系尊属(父母・祖父母)、兄弟姉妹に限られます。

ただし、法律が定める方式で作成された遺言書があれば、法定相続のルールに関係なく相続人や財産の分割方法を指定することができます。

(3)事業承継と相続の違い

事業承継と相続には、主に三つの違いがあります。

事業承継と相続の違い

  1. 対象財産の違い
  2. 承継者の違い
  3. タイミングの違い

それぞれについてご説明します。

1:対象財産の違い

相続の対象となるのは、被相続人の財産すべてです。

具体的には、預貯金や有価証券、不動産などのプラスの財産に加え、借金や未払い税金、未払い費用などのマイナスの財産も含まれます。

一方、事業承継の対象となるのは、会社の経営上必要な財産のみです。

具体的には、経営権(自社株式)、会社の経営に必要な不動産・設備・運転資金などの資産、そして経営者の人脈や信用、経営理念などの知的財産が該当します。

そのため、事業承継では、経営者個人が保有する財産については対象とならないことを押さえておきましょう。

2:承継者の違い

相続では、財産を引き継ぐことができるのは配偶者や子などの法定相続人のみです。

遺言書で第三者を指定しても、法定相続人には遺留分という権利が保障されているため、完全に除外することはできません。

一方、事業承継では後継者の選択に法的な制限がありません。

親族内承継はもちろん、従業員への承継やM&Aによる第三者への承継も可能です。

3:タイミングの違い

相続は、被相続人の死亡によって自動的に開始されます。

いつ発生するか予測できないため、事後的に対応を進めるという側面が強いです。

一方、事業承継は経営者の存命中からでも実施することが可能です。

むしろ、経営者が元気なうちに計画的に進めることが推奨されており、後継者の育成や株式の移転を数年かけて行うのが一般的となっています。

2.相続による事業承継で起こりやすい三つの問題

経営者が十分な準備をしないまま亡くなった場合、相続による事業承継では様々な問題が発生します。

特に注意すべき問題として、以下のものが挙げられます。

相続による事業承継で起こりやすい三つの問題

  1. 株式が分散して後継者の経営権が確保できない
  2. 遺留分侵害請求を受けるリスクがある
  3. 相続税の納税資金が不足する

それぞれについて具体的に見ていきましょう。

(1)株式が分散して後継者の経営権が確保できない

相続が発生すると、遺産分割協議が完了するまで自社株式は法定相続人全員の準共有状態となります。

この状態では、後継者が単独で株主としての権利を行使することはできません。

例えば、経営者である父が亡くなり、母・長男(後継者)・長女の3人が法定相続人だった場合を考えてみましょう。

法定相続分に従って遺産分割すると、母が2分の1、長男・長女がそれぞれ4分の1ずつ株式を相続することになります。

この場合、後継者である長男は4分の1の議決権しか持てず、会社の経営に関する重要な決定を単独で行うことができません。

つまり、後継者以外の株主が協力すると、後継者を解任したり会社の経営権を掌握したりすることも可能な状態になります。

このように、経営権の確保が難しくなることもあるので、相続による事業承継は早期に対応しなければなりません。

(2)遺留分侵害額請求を受けるリスクがある

経営権を後継者に集中させるため、遺言書で後継者に自社株式のすべてを相続させると指定しても、他の相続人には遺留分が保障されています。

遺留分とは、法律で相続人に保障された最低限の相続分であり、配偶者や子の場合は法定相続分の2分の1が遺留分です。

例えば、相続財産の大部分が自社株式であるケースを想定してみましょう。

遺言で後継者に全株式を相続させた結果、ほかの相続人の取得分が遺留分を下回った場合、ほかの相続人は後継者に対して「遺留分侵害額請求」を行うことができます。

この請求が認められると、後継者は遺留分相当額を金銭で支払わなければなりません。

特に自社株式の評価額が高額な場合、その支払いのために会社の資金を流出せざるを得なくなり、経営を圧迫する恐れがあるでしょう。

(3)相続税の納税資金が不足する

自社株式を相続すると、その評価額に応じて相続税が課税されます。

業績が好調な会社ほど株式の評価額は高くなり、それに比例して相続税も高額になる傾向があります。

相続税は原則として、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に現金で納付しなければなりません。

しかし、非上場会社の株式は換金性が低いため、相続税の納付にあてる現金が不足するケースもあります。

納税資金が不足すると、後継者は金融機関からの借入れや最悪の場合は自社株式を第三者に売却して資金を調達せざるを得なくなります。

この結果、経営権が弱体化したり、会社の財務状況が悪化したりするリスクが生じる可能性があります。

3.事業承継における相続対策・株式移転の方法

事業承継では、後継者への株式移転が最も重要なプロセスとなります。

株式移転の方法には、以下のようなものがあります。

事業承継における相続対策・株式移転の方法

  1. 生前贈与
  2. 相続
  3. 売買

それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

(1)生前贈与

生前贈与とは、経営者が存命中に後継者に対して無償で株式を譲渡する方法です。

親族内承継でよく用いられる手法であり、計画的な株式移転で後継者の育成と株式の移転を並行して進めることができます。

また、暦年贈与(毎年110万円の基礎控除)を活用すれば、長期間にわたって少しずつ株式を移転することで税負担を軽減できる可能性もあります。

さらに、後述する事業承継税制を活用すれば、贈与税の納税の猶予・免除を受けることができる可能性も高まります。

一方、贈与税の税率は相続税より高くなる点がデメリットです。

また、暦年贈与の相続財産への加算期間は、2023年度税制改正により段階的に3年から7年へ延長されています(2031年1月1日以後に開始する相続から完全に7年適用)。

そのため、贈与を開始するタイミングにも注意が必要です。

(2)相続

相続による株式移転は、経営者の死亡後に遺言書や遺産分割協議によって後継者に株式を承継させる方法です。

生前贈与よりも基礎控除が大きく、相続税の負担を軽減できる可能性があります。

また、遺言書を作成しておけば、経営者の意思に沿った株式の承継が可能となるでしょう。

一方、デメリットとしては、相続発生のタイミングを予測できないため、計画的な承継が難しい点が挙げられます。

さらに、遺言書がない場合は法定相続人全員による遺産分割協議が必要となり、後継者が必要な株式を確保できない可能性も生じるでしょう。

(3)売買

売買による株式移転は、経営者が後継者に株式を有償で譲渡する方法です。

親族外承継やM&Aによる第三者承継で多く用いられ、経営者は株式の対価を金銭で受け取ることができるため、これを老後資金や相続対策に活用しやすいです。

また、親族間でも適正価格での売買であれば、贈与税や相続税の問題を回避できるでしょう。

デメリットとしては、後継者が株式の買取資金を用意する必要があること、また売却した経営者が譲渡所得税を払わなければならない点が挙げられます。

4.事業承継の相続税・贈与税に関わる自社株評価とは

自社株評価とは、取引相場のない株式評価のことで、相続や贈与のために税務上のルールによって金額で評価したものを意味します。

自社株評価において押さえておくべきポイントは、以下です。

事業承継の相続税・贈与税に関わる自社株評価とは

  1. 非上場株式の評価が必要な理由
  2. 会社規模による評価方式の違い

順にご説明します。

(1)非上場株式の評価が必要な理由

非上場株式の評価は、国税庁が定める「財産評価基本通達」に基づいて行われます。

この評価額が贈与税や相続税の課税標準となるため、事前に自社株式の評価額を把握しておくことが重要です。

業績が好調で内部留保が厚い会社ほど株式評価額は高くなる傾向があり、それに伴い税負担も増加します。

評価額を事前に把握しておけば、適切な対策を講じて税負担を軽減することが可能となるでしょう。

(2)会社規模による評価方式の違い

非上場株式の評価方法は、会社の規模によって異なります。

会社規模は、従業員数・総資産価額・取引金額の三つの要素によって、大会社・中会社・小会社の5段階(中会社はさらに大・中・小に細分化)に分類されます。

会社規模 主な評価方式 特徴
大会社 類似業種比準方式 上場企業の株価を基準に評価
中会社 併用方式 類似業種比準方式と純資産価額方式を併用
小会社 純資産価額方式 会社の純資産を基準に評価

会社の規模に応じて評価方式が異なるため、専門家に相談して適正な評価を受けておくことが重要です。

5.事業承継の相続対策に活用できる事業承継税制

事業承継税制は、後継者の税負担を軽減できる制度です。

具体的には、贈与税・相続税の納税負担の猶予を受け、一定の要件を満たすことで納税が免除されます。

事業承継税制で押さえておくべきポイントは、以下です。

事業承継の相続対策に活用できる事業承継税制のポイント

  1. 事業承継税制の概要
  2. 一般措置と特例措置の違い
  3. 特例措置の適用要件
  4. 特例承継計画の提出期限

順にご説明します。

(1)事業承継税制の概要

事業承継税制とは、中小企業の後継者が非上場株式を贈与・相続により取得した場合に、贈与税・相続税の納税が猶予され、一定の要件を満たせば免除される制度です。

この制度は、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けることで適用されます。

事業承継税制には、会社の株式を対象とする「法人版事業承継税制」と個人事業者の事業用資産を対象とする「個人版事業承継税制」の2種類があります。

法人版事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」の二つがあり、特例措置のほうが優遇されています。

(2)一般措置と特例措置の違い

一般措置と特例措置には、以下のような違いがあります。

項目 一般措置 特例措置
対象株式数 発行済議決権株式の2/3まで 全株式
納税猶予割合(贈与税) 100% 100%
納税猶予割合(相続税) 80% 100%
後継者の人数 1人のみ 最大3人
雇用確保要件 5年間平均8割維持(未達成で猶予取消し) 実質撤廃(未達成でも継続可能)
適用期限 期限なし 2027年12月31日まで
特例承継計画 不要 2027年9月30日までに提出が必要

特例措置は、2018年度の税制改正で創設された10年間限定の時限措置です。

一般措置に比べて要件が緩和されており、活用しやすい制度であり、期限に間に合うのであれば活用することも検討してみましょう。

(3)特例措置の主な適用要件

特例措置の適用を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

適用要件の種類 具体的な内容
会社の要件 ・中小企業基本法に定める中小企業者であること
・非上場会社であること
・風俗営業会社に該当しないこと
・資産管理会社(一定の要件を満たす場合を除く)に該当しないこと
先代経営者の要件 ・会社の代表者であったこと(過去または贈与・相続時点)
・同族関係者と合わせて議決権の過半数を保有していたこと
・同族関係者の中で筆頭株主であったこと
後継者の要件 ・贈与時または相続時に会社の代表者であること
・先代経営者からの贈与等により議決権の過半数を保有すること
・同族関係者の中で筆頭株主となること(後継者が複数の場合は総議決権の10%以上保有)

どのような会社であっても無条件に利用できるわけではないため、あらかじめ自社が適用要件を満たすか確認しておきましょう。

(4)特例承継計画の提出期限

特例措置を利用するには、2027年9月30日までに「特例承継計画」を都道府県庁に提出しなければなりません。

この期限を過ぎると、特例措置の適用を受けることができなくなります。

また、実際の贈与・相続は2027年12月31日までに行う必要があり、この期限を過ぎると、特例承継計画を提出していても、特例措置ではなく一般措置の適用となります。

期限の定めが厳しいため、特例措置の活用を検討している経営者は、早急に専門家に相談し、準備を進めることをおすすめします。

6.事業承継・相続の手続きと必要書類

事業承継・相続を進めるには、様々な手続きと書類の準備が必要です。

事業承継・相続の手続きと必要書類

  1. 親族内承継(生前贈与・相続)の場合の手続き
  2. 事業承継税制を利用する場合の手続き
  3. 相続発生時の法人の手続き
  4. 個人事業主の事業承継・相続手続き

承継の方法によって必要な手続きが異なるため、事前に確認しておきましょう。

(1)親族内承継(生前贈与・相続)の場合の手続き

生前贈与で株式を移転する場合、まず定款の規定を確認します。

多くの会社では株式の譲渡に取締役会や株主総会の承認が必要とされているため、定款に従って承認手続きを行いましょう。

承認後は贈与契約書を作成し、株主名簿の名義を変更します。

相続の場合はまず相続人全員で遺産分割協議を行い、自社株式の承継者と承継割合を決定します。

遺言書がある場合は、その内容に従って手続きを進めるようにしましょう。

遺産分割協議が整ったら、株主名簿の名義変更と相続税の申告を行います。

なお、どちらの方法でも取得した株式分の贈与税・相続税の申告は必須なので、期限内に実施しましょう。

(2)事業承継税制を利用する場合の手続き

事業承継税制(特例措置)を利用する場合は、2027年9月30日までに「特例承継計画」を都道府県庁へ提出し、確認を受ける必要があります。

特例承継計画には、後継者の氏名、事業承継の予定時期、承継時までの経営見通し、承継後5年間の事業計画などを記載し、認定経営革新等支援機関(税理士・公認会計士・商工会議所など)の指導・助言を受けなければなりません。

その後、2027年12月31日までに贈与または相続を実行し、贈与の場合は贈与税申告期限まで、相続の場合は相続開始から8か月以内に、都道府県庁へ特例認定申請を行います。

認定を受けた後、贈与税・相続税の申告書に認定書の写しを添付して税務署へ提出することで、納税猶予の適用を受けられます。

(3)相続発生時の法人の手続き

経営者が亡くなった場合、法人としても手続きが必要となります。

まず、代表取締役の変更登記が必要なので、後継者を新たな代表取締役に選任し、2週間以内に法務局で登記手続きを完了させなければなりません。

次に、代表者変更に伴い、金融機関に対して銀行口座の届出印や署名者の変更手続きが必要となります。

さらに、取引先や従業員への通知、各種許認可の変更届出なども速やかに行う必要があることも忘れてはいけません。

(4)個人事業主の事業承継・相続手続き

個人事業の場合、事業に関する資産は事業主個人の所有物となるため、法人とは異なる手続きが必要です。

まず、亡くなった経営者の「個人事業の廃業届出書」を税務署に提出します。

次に、後継者が「個人事業の開業届出書」を提出し、青色申告を行う場合は「青色申告承認申請書」も提出しましょう。

事業用資産(店舗、設備、在庫など)は相続財産として後継者が相続し、名義変更手続きを行います。

7.事業承継の相続トラブルと遺留分に関する注意点

事業承継では、遺留分に関するトラブルが発生しやすいです。

例えば、父が経営する会社の株式を生前に後継者(長男)へ贈与し、数年後に父が亡くなったケースでは、ほかの兄弟姉妹から「遺留分侵害額請求」がなされる可能性があります。

生前贈与された株式も遺留分の算定基礎に含まれるため、他の兄弟姉妹からすれば「自分が相続する分の財産を侵害された」という主張が成り立つためです。

この場合、長男は遺留分に該当する金銭をほかの兄弟姉妹へ支払うこととなり、金銭的なダメージを受けることになります。

そのため、事前に準備をしておくことが大切であり、以下のようなポイントを押さえておきましょう。

事業承継の相続トラブルと遺留分に関する注意点

  1. 遺留分に関する民法の特例(除外合意・固定合意)
  2. 遺留分の事前放棄を検討する
  3. 遺言書を作成しておく

順に解説します。

(1)遺留分に関する民法の特例(除外合意・固定合意)

経営承継円滑化法では「遺留分に関する民法の特例」が設けられています(参考:遺留分に関する民法特例のポイント(会社向け))。

遺留分に関する民法特例では主に以下の項目が設けられています。

遺留分に関する民法の特例

  • 除外合意
  • 固定合意

除外合意とは、後継者が贈与により取得した自社株式を遺留分算定の基礎財産から除外することを、推定相続人全員で合意することです。

これにより、ほかの相続人は当該株式について遺留分侵害額請求ができなくなり、後継者は安心して株式を保有することができます。

一方、固定合意とは、後継者が贈与により取得した自社株式について、遺留分算定の基礎財産に算入する価額を合意時の時価に固定することです。

これにより、相続開始時に株式の評価額が上昇していても、遺留分の計算では合意時の価額に基づいて算出されるため、後継者の負担を軽減することができるでしょう。

このような特例を活用することで、遺留分に関するトラブルを回避することができます。

なお、この特例の適用には経済産業大臣の確認及び家庭裁判所の許可が必要となることも把握しておきましょう。

(2)遺留分の事前放棄を検討する

遺留分の事前放棄も、トラブル防止に有効な手段の一つです。

相続人は、被相続人の生前に自分の遺留分を放棄することができます。

ただし、遺留分の事前放棄には家庭裁判所の許可が必要であり、放棄しようとする相続人自身が申立てを行わなければなりません。

後継者以外の相続人に対して、代わりの財産を提供するなどして遺留分放棄への協力を求めるなどし、後々のトラブルを防ぎましょう。

(3)遺言書を作成しておく

遺言書の作成は、相続トラブルを防ぐための基本的な対策です。

遺言書で後継者に自社株式を相続させる旨を明記しておけば、遺産分割協議でのトラブルを回避することができます。

遺言書を作成する際は、ほかの相続人に配慮した内容にし、後継者以外の相続人へは株式以外の財産などを分配するようにしましょう。

また、遺言書は公正証書遺言の作成など法的に有効な形式で作成することで、法的な効力を確固たるものとした遺言として機能します。

もっとも、遺言書の作成には注意すべきポイントも多く、専門知識などがなければ判断が難しいことも多いです。

法的に問題がない遺言書を作成するためには、弁護士や税理士などの専門家に相談したうえで作成を進めることが重要です。

まとめ

事業承継と相続は、どちらも引き継ぐという意味を持ちますが、対象財産・承継者・タイミングなど、様々な点で異なります。

経営者がこの違いを理解せずに何の対策もしないまま亡くなると、様々な問題が発生する可能性があります。

円滑な事業承継を実現するためには、後継者以外の相続人への配慮や株式の評価の把握など、様々な準備が必要です。

事業承継は専門的な知識が求められる複雑な手続きなので、早めに専門家に相談し、計画的に準備を進めましょう。

監修者

稲葉 孝史

税理士

株式会社シルスフィア会計事務所 代表取締役。シルスフィア税理士事務所 代表税理士。
中小企業の会計税務業務に加え、SPCを利用した不動産証券化や事業再生などの特殊業務に従事している。過去には、不動産証券化協会(ARES)認定マスター制度の資格試験において、テキスト執筆や講師、試験問題作成委員などを担当した経歴を持ち、不動産証券化分野で豊富なノウハウと実績を有する。