事業承継とは?種類・メリット・デメリットから不動産活用まで徹底解説
「事業承継を検討しているが、何から始めればいいかわからない」
「後継者がいないまま経営者の高齢化が進んでいる」
このようなお悩みをお持ちの経営者の方もいると思います。
多くの経営者にとって、事業承継は避けて通れない最重要課題です。
後継者不在による倒産が社会問題となるなか、早期の準備が会社の存続を左右します。
本記事では、事業承継の三つの手法や廃業との違い、具体的な進め方に加え、不動産を活用した節税対策まで詳しく解説します。
自社に最適なバトンタッチの形を見つけるための指針としてご活用ください。
1.事業承継とは

事業承継は、経営者にとって最後の大仕事となる重要なテーマです。
まずは事業承継の定義と、現在注目されている背景について確認していきましょう。
(1)事業承継の定義
事業承継とは、会社の経営を現在の経営者から後継者へ引き継ぐことを意味します。
単に代表者の肩書きを移すだけでなく、株式や資産などの財産、経営権や人脈などの経営、技術やノウハウなどの知的資産の三つの要素を包括的に引き継ぐ必要があります。
中小企業庁の『事業承継ガイドライン』では、事業承継を「親族内承継」、「従業員承継」、「M&A(社外への引継ぎ)」の三つに分類しています。
事業承継は廃業とは異なり、会社が存続し従業員の雇用や取引先との関係が維持されるのが大きな特徴です。
経営者が長年築いてきた事業価値を次世代に残すことができます。
(2)事業承継が注目されている背景
事業承継が注目される背景は、中小企業経営者の高齢化と後継者不在問題です。
帝国データバンクの調査によると、社長の平均年齢は60.7歳となり、34年連続で上昇を続けています。
さらに、2024年の後継者不在率は52.1%で、2社に1社以上が後継者未定という状況が続いています。
一方で、注目すべき変化として「脱ファミリー化」の動きもあります(参考:中小企業・小規模事業者における M&Aの現状と課題)。
2024年の調査では、社内の役員や従業員が経営を引き継ぐ内部昇格が36.4%に達し、初めて同族承継の32.2%を上回りました。
これは、親族に適任者がいない場合でも、従業員承継やM&Aなど多様な選択肢を活用して事業を継続させようとする意識が広がっていることを示しています。
なお、「後継者難倒産」は2024年度に507件に上り、早期に事業承継へ向けた準備を進める重要性が増しています(参考:全国「後継者不在率」動向調査(2024年)|株式会社 帝国データバンク[TDB])。
2.事業承継の三つの種類

事業承継には三つの方法があります。
- 親族内承継
- 従業員・親族外承継(MBOなど)
- M&Aなどの第三者承継
それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解した上で、自社に最適な方法を選択しましょう。
(1)親族内承継
親族内承継とは、現経営者の子どもや配偶者などの親族に事業を引き継ぐ方法です。
中小企業庁の調査によると、2024年の親族内承継(同族承継)の割合は32.2%まで減少していますが、依然として有力な選択肢の一つとなっています。
親族内承継のメリットは、従業員や取引先、金融機関からの理解を得やすい点にあります。
「長年働いてきた社長のご家族なら安心だ」という心理的な受け入れやすさがあり、経営方針の一貫性も保ちやすいでしょう。
また、相続や贈与を通じて株式や資産を移転しやすく、事業承継税制などの税制優遇措置を活用できる可能性もあります。
また、複数の後継者候補がいる場合には、後継者争いに発展するリスクもあるため、早めの後継者選定と周囲への周知が欠かせません。
(2)従業員・親族外承継(MBOなど)
従業員・親族外承継とは、会社の役員や従業員に事業を引き継ぐ方法で、MBO(Management Buyout)やEBO(Employee Buyout)などの手法が含まれます。
2024年の中小企業庁の調査では、内部昇格による承継が36.4%に達し、初めて同族承継を上回りました。
この方法のメリットは、経営者として能力があるか見極めたうえで事業承継を進められる点です。
社内で長期間働いてきた従業員であれば、事業内容や企業文化を熟知しており、経営方針の一貫性を保ちやすいでしょう。
ただし、従業員が株式を買い取るための資金力がない場合には、資金調達が大きな課題となります。
資金調達の方法としては、銀行からの借入れ、経営承継円滑化法に基づく金融支援、後継者候補の役員報酬引き上げなどが考えられます。
また、経営者の連帯保証(個人保証)の引継ぎも、事業承継のハードルを上げる要因となっています。
(3)M&Aなどの第三者承継
M&Aなどの第三者承継とは、親族や従業員以外の外部の企業や個人に事業を引き継ぐ方法です。
中小企業庁の調査では、M&Aや出向を中心とした承継が20.5%、外部招聘が7.5%となり、社外の第三者への承継も定着しつつあります。
第三者承継は、親族や社内に適任者がいない場合でも、後継者候補を広く外部から探せるため、事業を継続できるのがメリットです。
また、買い手側の資本力や経営ノウハウの活用により、会社の成長や従業員雇用の安定が見込まれる可能性があります。
現経営者にとっても、株式譲渡により創業者利益を得られる点も魅力です。
一方で、買収後に経営方針の変更や雇用条件の変化が生じる可能性があるため、専門家のサポートを受けながら慎重に進めていきましょう。
3.事業承継と廃業の比較

後継者がいない場合、事業承継だけでなく廃業も選択肢の一つです。
しかし、事業承継と廃業には、以下のような点で違いがあります。
- コスト
- 手間
- 顧客への影響
両者の違いを正しく理解しましょう。
(1)コスト
事業承継と廃業では、発生するコストの内容や金額が大きく異なります。
廃業の場合、登録免許税は解散(事業を停止するための手続き)の場合は3万円、清算結了(会社の財産をすべて清算した際に行われる手続き)の場合は2,000円が基本で、別途、書類実費や専門家報酬、官報公告費などがかかります。
加えて、在庫や設備の処分費用、従業員の退職金や解雇手当、借りている事務所等の不動産の原状回復費用なども必要となり、会社の規模によっては数百万円に達します。
一方、事業承継の場合は、相続税や贈与税などの税金、専門家への報酬、各種手続きの実費などが発生します。
M&Aによる第三者承継の場合は、M&A仲介会社への手数料も必要となりますが、事業承継税制の活用や補助金制度を利用するとコストを抑えられる可能性があります。
(2)手間
廃業は事業承継と比べて短期間で完了します。
具体的には、取引先・従業員との契約終了、株主総会での解散決議、解散登記、債務整理・財産分配、清算結了登記という流れで進み、2~3か月程度かかります。
一方、事業承継では、中小企業庁の事業承継ガイドラインによると、後継者決定から事業承継完了までの期間は3年以上の割合が半数を超え、10年以上を要するケースもあります。
ただし、この期間には後継者の選定・育成、事業承継計画の策定、株式や資産の移転準備、関係者への周知などが含まれます。
経営者の平均引退年齢が70歳前後であることを考えると、これらの手間を考慮しておおむね60歳頃には事業承継に向けて準備するのが望ましいでしょう。
(3)顧客への影響
廃業を選択した場合、会社の顧客は取引先を失います。
特に代替困難な製品やサービスを提供していた場合には長年の取引関係が途切れることで、顧客の業務への影響が大きくなるでしょう。
これに対して、事業承継の場合は、会社が存続するため顧客との取引関係を維持できます。
親族内承継や従業員承継であれば、担当者や取引慣行がそのまま引き継がれることもあり、顧客にとっては安心です。
M&Aによる第三者承継の場合も、買い手の方針次第ではあるものの、多くの場合は既存の取引関係が継続されます。
顧客基盤や取引先ネットワークは会社の重要な資産であり、これらを維持できる点は事業承継の大きなメリットです。
4.事業承継を行うメリット

事業承継には、経営者だけでなく従業員や取引先、地域社会にとっても多くのメリットがあります。
- 従業員の雇用維持
- 取引先との関係継続
- 技術・ノウハウの継承
- 地域経済への貢献
それぞれについて確認しましょう。
(1)従業員の雇用維持
事業承継のメリットの一つは、従業員の雇用維持です。
廃業を選択した場合、従業員は職を失い、新たな就職先を探さなければなりません。
特に長年勤めてきたベテラン従業員にとっては、年齢的に再就職が難しいケースもあるでしょう。
一方、事業承継によって会社が存続すれば、従業員は引き続き働くことができます。
経営者にとって、長年苦楽を共にしてきた従業員の生活を守ることは大きな責任であり、事業承継はその責任を果たす手段となります。
(2)取引先との関係継続
事業承継により、長年築いてきた取引先との関係を維持できます。
廃業した場合、仕入先や販売先は新たな取引先を探す必要があり、双方にとって負担が生じます。
特に中小企業の場合、経営者同士の信頼関係に基づいた取引が多く、会社が消滅することで築いてきた信用も失われてしまいます。
事業承継を行えば、取引関係はそのまま引き継がれ、取引先にとっても安定した事業環境が維持されます。
後継者にとっても、既存の取引ネットワークは事業を継続していくうえで貴重な経営資源となるでしょう。
(3)技術・ノウハウの継承
中小企業が長年培ってきた技術やノウハウは、重要な財産です。
事業承継を行うことで、これらの無形の資産を次世代に引き継ぐことができます。
特に製造業や職人技を要する業種では、技術の伝承には長い時間がかかるため、計画的な事業承継が不可欠です。
廃業を選択した場合、こうした技術やノウハウは失われてしまい、二度と取り戻すことができません。
事業承継は単なる経営権の移転ではなく、日本のものづくりの伝統を守る役割も担っているといえるでしょう。
(4)地域経済への貢献
中小企業は地域経済の担い手として重要な役割を果たしています。
事業承継によって会社が存続すれば、地域の雇用を維持し、地元での消費活動を継続できます。
また、中小企業が納める法人税や固定資産税は地方自治体の重要な財源となっており、会社の存続は地域財政にも貢献します。
このように、事業承継は個々の会社の問題にとどまらず、地域社会全体の持続可能性にも関わる重要なテーマです。
5.事業承継を行うデメリット

事業承継にはメリットがある一方で、注意すべきデメリットや課題も存在します。
事前に把握し、適切に対策しましょう。
- 後継者への精神面・資金面の負担
- 税金(相続税・贈与税)の負担
- 親族間・社内でのトラブル
- 準備期間の長期化
(1)後継者への精神面・資金面の負担
事業承継において、後継者は経営者としての重責を担います。
中小企業の経営者は、会社の借入れに対して個人保証(連帯保証)を負っていることが多く、後継者もこの保証を引き継がなければならないこともあります。
また、従業員承継の場合は株式の買取資金が必要となり、後継者にとって大きな負担になります。
「経営者保証に関するガイドライン」を活用して個人保証を外す・緩和する方法もありますが、財務の健全性や情報開示の徹底など、一定の条件があります。
したがって、後継者の負担を軽減するためには、事前の資金計画や保証対策を考慮しなければなりません。
(2)税金(相続税・贈与税)の負担
親族内承継や従業員承継において、株式を移転する際には相続税や贈与税の納税義務が発生します。
特に純資産が大きい会社ほど株価評価が高くなり、税負担も重くなる傾向にあります。
相続税は、遺産額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に課税されます。
また、贈与税は年間の贈与額が110万円を超える場合に課税され、贈与額が大きくなるほど税率も高くなります。
なお、こうした税負担を軽減するために、事業承継税制が設けられています。
事業承継税制の特例措置を活用すれば、一定の要件を満たすことで贈与税・相続税の納税が猶予され、後継者が死亡した場合などには免除されることがあります。
ただし、特例措置を受けるためには期限内に特例承継計画を提出する必要があるため、早めに対応しましょう。
(3)親族間・社内でのトラブル
親族内承継では、後継者以外の相続人との間で遺産分割をめぐるトラブルが発生するリスクがあります。
特に後継者候補が複数いる場合には、経営権をめぐる争いに発展しかねません。
従業員承継の場合も、後継者に選ばれなかった従業員のモチベーション低下や社内の人間関係が悪化するリスクがあります。
こうしたトラブルを防ぐためには、早い段階から関係者との対話を重ね、事業承継の方針を明確にしておきましょう。
(4)準備期間の長期化
中小企業庁の事業承継ガイドラインによると、事業承継には一般的に5~10年程度の準備期間が必要です。
後継者の育成には相応の時間がかかり、技術やノウハウの引継ぎ、経営者としての判断力の養成、社内外の人脈構築などを計画的に進めなければなりません。
日々の業務に追われ、事業承継の準備を後回しにしてしまいがちです。
しかし、経営者が病気や事故で急に経営ができなくなった場合、準備不足が会社の存続を脅かす事態につながることもあります。
そのため、「元気なうちに準備を始める」という意識を持ち、計画的に事業承継を進めましょう。
6.事業承継を進めるための5つのステップ

事業承継を円滑に行うためには、以下のようなステップで進めることになります。
- 自社資産や負債の棚卸し
- 後継者の決定と教育
- 事業承継計画書の作成
- 承継手続き
- さらなる成長への取り組み
(1)自社資産や負債の棚卸し
事業承継の第一歩は、会社の現状を正確に把握することです。
会社が保有する資産(土地・建物・設備・預金・売掛金など)と負債(借入金・買掛金・未払金など)を洗い出し、純資産の状況を確認します。
同時に、従業員数、設備の状況、知的財産、ブランド価値といった経営資源もリストアップしましょう。
また、現経営者が保有する株式、個人資産と会社資産の区分、個人保証の有無なども確認しましょう。
この段階で会社の強みと弱みを明らかにすると、事業承継に向けた課題が明確になります。
(2)後継者の決定と教育
次に、後継者候補を絞り込み、後継者を決定します。
親族内承継、従業員承継、第三者承継のそれぞれのメリット・デメリットを理解し、自社に最適な方法を選択しましょう。
後継者が決まったら、計画的な育成を開始します。
例えば、社内の各部門で現場経験を積ませる、子会社や関連会社で経営経験を積ませる、外部の研修やセミナーに参加させるなど、段階的に経営者としての能力を高めていくのです。
特に重要なのは、経営者としての心構えや経営理念の継承です。
また、数字で表せない「知的資産」(顧客との人脈やネットワークなど)の引継ぎも十分に時間をかけて進めましょう。
(3)事業承継計画書の作成
後継者が決まったら、事業承継計画書を作成します。
事業承継計画書とは、現経営者に関する情報、経営理念、財政状態、将来の経営ビジョン、誰に・いつ・どのように引き継ぐかなど、事業承継上の課題をまとめた書類です。
計画書の作成にあたっては、会社の10年後を見据え、具体的なスケジュールを策定しましょう。
事業承継計画表として、年度ごとに「会社」、「現経営者」、「後継者」それぞれの行動計画をまとめておくと、進捗管理がしやすくなります。
また、事業承継税制の特例措置を受けるためには、期限内に特例承継計画を都道府県知事に提出しなければなりません。
計画書は後継者や親族と共同で作成し、取引先や従業員、金融機関など関係者の理解を得ることが大切です。
(4)承継手続き
事業承継計画に基づき、具体的な承継手続きを進めます。
株式の移転については、相続(相続発生まで株式を移転しない)、贈与、売買のいずれかの方法で行います。
相続税や贈与税の負担を軽減するために、事業承継税制の活用を検討しましょう。
経営権の移転については、代表取締役の交代手続き及び登記、取引先や金融機関への挨拶、従業員への周知などを行います。
個人保証の引継ぎについても、金融機関と協議して進めていきます。
専門性が要求されるため、この段階では税理士や弁護士といった専門家のサポートを受けるのが効果的です。
(5)さらなる成長への取り組み
事業承継は、経営権を移転して終わりではありません。
承継後のさらなる成長への取組みも重要なステップとなります。
後継者は、承継した事業をさらに発展させるために、新たな経営課題に取り組むべきでしょう。
中小企業庁の調査によると、経営者の交代があった中小企業は、承継後3年目以降からは売上高や利益の成長率が同種業の平均を上回るという報告があります(出典:事業承継を知る|中小企業庁)。
そのため、事業承継は単なる経営者交代の機会ではなく、会社のさらなる成長・発展の機会として捉えることが大切です。
7.不動産を活用した事業承継対策

事業承継において、株価対策は重要なテーマの一つです。
特に不動産を活用した対策方法には、以下のようなものがあります。
- 不動産の購入
- 事業用不動産の評価見直し
- 自社ビルの売却
- 賃貸不動産経営による収益確保
順にご説明します。
(1)不動産の購入
不動産を購入することで、自社株の評価を相対的に引き下げる効果が期待できます。
非上場株式の評価には「純資産価額方式」と「類似業種比準価額方式」、「配当還元方式」がありますが、不動産活用は特に純資産価額方式で評価される会社に効果的です。
純資産価額方式では、会社の資産を相続税評価額で計算しますが、不動産は時価ではなく路線価(土地)や固定資産税評価額(建物)で評価されます。
不動産の相続税評価額は、一般的に時価よりも低くなる傾向にあるため、現金を不動産に置き換えることで純資産評価額が下がり、結果的に株価を抑える効果が期待できます。
ただし、取得から3年以内は通常の取引価格で評価されるほか、近年の税制改正によりマンション等の評価方法が厳格化されている点にも留意が必要です。
不動産の購入による対策は、事業承継のタイミングから逆算して早めに検討を始めましょう。
(2)事業用不動産の評価見直し
会社が保有している事業用不動産について、適正な評価を行うことも株価対策につながります。
不動産の相続税評価額は、土地の形状(不整形地、無道路地、がけ地など)や土壌汚染、騒音・振動などの環境的な要因によって減額評価が認められる場合があります。
特に純資産価額方式で評価される会社にとっては、不動産評価の見直しが株価引き下げに大きく寄与する可能性があります。
(3)自社ビルの売却
自社ビルの売却も、事業承継対策として効果的な場合があります。
自社ビルの売却により得た利益を役員退職金やその後の経営の原資として活用できます。
また、売却後も同じビルを借りて使用する「リースバック」という手法を使えば、拠点を維持しながらキャッシュを創出できます。
ただし、不動産売却には多額の税金が発生する可能性があるため、事前に専門家に相談のうえ進めていきましょう。
(4)賃貸不動産経営による収益確保
賃貸不動産を取得・運営することで、後継者の収入源を確保しながら株価対策も行えます。
賃貸不動産を保有している場合、土地は「貸家建付地」として、建物は「貸家」として評価されます。
借主に借家権が生じるため、その権利分が評価額から差し引かれ、自己使用の不動産よりも相続税評価額が低くなるケースもあります。
また、賃貸収入により安定したキャッシュフローを確保できるため、後継者にとっても経営の安定につながるでしょう。
ただし、税務対策のためだけに不動産投資を行うと、本業とのシナジーがなく企業価値そのものが下がってしまうリスクもあるため、総合的な観点から検討しましょう。
会社の不動産活用については、以下をご覧ください。
8.事業承継の相談先と支援機関

事業承継は、専門家や支援機関のサポートを受けて進めていきましょう。
主な相談先としては、以下が選択肢となります。
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- M&A仲介会社・アドバイザー
- 税理士や公認会計士
- 金融機関
それぞれの特徴などについて見ていきましょう。
(1)事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センターは、国が設置する公的な相談窓口です。
全国47都道府県に設置されており、後継者不在や未定の中小企業に対して、事業承継に関する課題解決に向けた助言や情報提供、マッチング支援を行っています。
相談は無料で、秘密厳守で対応してもらえます。
また、親族内承継の場合は事業承継計画策定の支援、M&Aによる第三者承継の場合は譲受先の紹介やマッチング支援など、幅広いサポートを受けられます。
このほか、創業を目指す起業家と後継者不在企業を引き合わせる「後継者バンク」も運営しており、新たな後継者を見つける手段としても活用できます。
(2)M&A仲介会社・アドバイザー
M&Aによる第三者承継を検討している場合は、M&A仲介会社やアドバイザーに相談することが効果的です。
M&A仲介会社は、売り手と買い手のマッチング、企業価値評価、条件交渉、デューデリジェンス、契約書作成など、M&Aプロセス全体をサポートします。
M&A仲介会社の手数料は、成功報酬制が一般的で、取引金額や純資産価格等に応じて算定されるレーマン方式が多く採用されており、最低報酬額を定めている会社が多いです。
近年は、クロージングまで手数料がかからない完全成功報酬制を採用する仲介会社も増えており、初期費用を抑えたい経営者にとっては選択肢が広がっています。
(3)税理士
事業承継における税務面のサポートには、税理士が欠かせません。
株式の評価、相続税・贈与税の試算、事業承継税制の活用、節税対策など、専門的な知識が必要な分野で適切なアドバイスを受けられます。
特に株価評価は複雑な計算が必要となるため、顧問税理士や事業承継に詳しい税理士に相談しましょう。
税理士への報酬は、業務内容や案件の規模によって異なります。
事業承継に関する総合的なサポートを依頼した場合、事業承継が完了するまでの間に数百万円から数千万円程度の費用がかかることもあります。
一方で、適切な税務上の対策を行うことで、費用を上回るメリットが期待できるでしょう。
(4)金融機関
取引のある金融機関も、事業承継の相談先として活用できます。
多くの金融機関では、事業承継支援を専門とする部署を設けており、融資や資金調達の相談だけでなく、事業承継計画の策定支援、M&Aのマッチング支援なども行っています。
特に地域の金融機関は、地元の会社の事情に詳しく、長年の取引を通じて会社の実態を把握しているため、実情に合ったアドバイスを受けられます。
例えば、日本政策金融公庫では、事業承継に特化した融資メニューを用意しており、後継者が株式を買い取るための資金調達などに活用できます。
経営者保証に関するガイドラインを活用した個人保証の見直しについても、金融機関との協議が必要となるため、早めに相談を始めましょう。
まとめ
事業承継は、会社の経営を次世代に引き継ぐための重要な取組みです。
2024年の後継者不在率は52.1%と依然として高水準にあり、「脱ファミリー化」が進む中で、親族内承継だけでなく従業員承継やM&Aなど多様な選択肢があります。
事業承継には一般的に5~10年の準備期間が必要とされており、経営者が60歳頃には準備を開始することが望ましいとされています。
後継者難による倒産を防ぎ、従業員の雇用や取引先との関係、長年培ってきた技術・ノウハウを守るためにも、早めの対策が欠かせません。
事業承継では、自社の資産・負債の棚卸し、後継者の選任・教育、事業承継計画書の作成、具体的な承継手続き、ポスト承継の実施というステップを計画的に進めていきましょう。
また、不動産を活用した株価対策や、事業承継税制の活用も効果的な手段です。
専門家の助けを借りて、事業承継をスムーズかつ自社のメリットになる形で進めましょう。
監修者
稲葉 孝史
税理士
株式会社シルスフィア会計事務所 代表取締役。シルスフィア税理士事務所 代表税理士。
中小企業の会計税務業務に加え、SPCを利用した不動産証券化や事業再生などの特殊業務に従事している。過去には、不動産証券化協会(ARES)認定マスター制度の資格試験において、テキスト執筆や講師、試験問題作成委員などを担当した経歴を持ち、不動産証券化分野で豊富なノウハウと実績を有する。
株式会社シルスフィア会計事務所 代表取締役。シルスフィア税理士事務所 代表税理士。
中小企業の会計税務業務に加え、SPCを利用した不動産証券化や事業再生などの特殊業務に従事している。過去には、不動産証券化協会(ARES)認定マスター制度の資格試験において、テキスト執筆や講師、試験問題作成委員などを担当した経歴を持ち、不動産証券化分野で豊富なノウハウと実績を有する。
監修者
塚田 拓士
不動産鑑定士
新卒で東京国税局に入局し、相続税の税務調査を担当しながら不動産鑑定士試験に合格。2007年にフィンテックグローバル(FGI)に入社し、事業再生、事業承継投資やPMI等を経験したのち、不動産M&Aによる投資事業を始め、FGIの主要事業に育てた。現在は不動産M&Aや投資商品の販売を推進している。
新卒で東京国税局に入局し、相続税の税務調査を担当しながら不動産鑑定士試験に合格。2007年にフィンテックグローバル(FGI)に入社し、事業再生、事業承継投資やPMI等を経験したのち、不動産M&Aによる投資事業を始め、FGIの主要事業に育てた。現在は不動産M&Aや投資商品の販売を推進している。
