CRE戦略とは?企業不動産の活用で企業価値を最大化する方法
「CRE戦略とは?」
「不動産を活用して企業価値を高める方法が知りたい」
CRE戦略についてこのような疑問をお持ちの方もいると思います。
CRE戦略とは、法人が保有する不動産を効果的に活用し、企業価値を向上させる経営戦略のことです。
近年、国土交通省がガイドラインを発表したことを契機に、多くの法人がCRE戦略に注目しています。
この記事では、CRE戦略の基本知識から実践方法、成功事例まで詳しく解説しています。
最後まで読めば、自社の不動産資産を最適化し、コスト削減や企業価値向上を実現する具体的な方法がわかるでしょう。
1.CRE戦略とは

CRE戦略は、法人が保有する不動産を戦略的に活用する経営手法の一つです。
単なる不動産管理ではなく、企業価値の最大化を目指す包括的な取り組みという点に特徴があります。
具体的には、以下のことについて押さえておく必要があるといえます。
- CREの定義
- CRE戦略とは
順にご説明します。
(1)CREの定義
CREとは、「Corporate Real Estate(コーポレート・リアル・エステート)」の略称です。
日本語では「企業不動産」と訳され、法人が事業活動のために保有・使用する不動産全般を指します。
具体的には、本社ビルや工場、物流施設、店舗、社宅、賃貸不動産、遊休地など、法人が所有または賃借している全ての不動産が含まれます。
特に製造業や流通・小売業を営む法人では、総資産の中で不動産が大きな割合を占めており、経営に与えるインパクトは非常に大きくなっています。
これらの不動産は、法人の貸借対照表において重要な資産項目となっており、適切な管理と活用が求められています。
(2)CRE戦略とは
CRE戦略とは、法人の不動産を効果的に活用して企業価値を向上させる戦略のことです。
国土交通省のガイドラインでは、「企業不動産について『企業価値向上』の観点から経営戦略的視点に立って見直しを行い、不動産投資の効率性を最大限向上させていこうという考え方」と定義されています。
従来の不動産管理のあり方は、「所有・維持」に重点が置かれていたのに対し、CRE戦略では「経営資源としての最適活用」を目指します。
具体的には、コスト削減やキャッシュフロー改善、リスク分散、ブランディングなど、多角的な視点から不動産を活用していきます。
2.CRE戦略が注目されている背景

CRE戦略が日本で注目されるようになった背景には、いくつかの要因があります。
特に2000年代以降、法人を取り巻く経営環境の変化が不動産の戦略的活用の必要性を高めました。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 国土交通省によるガイドラインの発表
- 市場の縮小による競争激化
- 企業ブランディングの重要性
それぞれについて解説します。
(1)国土交通省によるガイドラインの発表
2008年4月、国土交通省が「CRE戦略を実践するためのガイドライン」を発表したことが、日本においてCRE戦略が普及する大きな転機となりました。
これは、2007年に設置された「合理的なCRE戦略の推進に関する研究会(CRE研究会)」において官民協力のもと作成されたものです。
ガイドラインでは、企業不動産の戦略的活用の重要性や具体的な実践方法が示されています。
このガイドラインでは、企業経営における不動産の位置づけを明確にし、経営層が主体的に関与すべき経営課題として位置づけられました。
これに伴い、多くの法人がCREの活用を目指して新たなビジネスモデルを模索するようになっていったのです。
(2)市場の縮小による競争激化
日本国内の人口減少や経済成長の鈍化により、多くの業界で市場が縮小しています。
このような環境下では、限られた経営資源を最大限に活用することが企業の存続のためには必須です。
特に不動産は法人の総資産に占める割合が大きいため、その効率的な活用が競争力を生み出します。
例えば、遊休不動産の活用や不要な資産の売却によるコスト削減を進めることで、企業の収益改善に大きく貢献することが期待できるでしょう。
(3)企業ブランディングの重要性
ブランディングの重要性が意識され始めたことも、CRE戦略に取り組む企業が増えたことの要因となっています。
日本では人口の減少や高齢化などの理由により市場規模が縮小している業界が増えており、従来のように新規の顧客が増えることが期待できる状態ではありません。
そこで、企業は顧客のロイヤリティを高め、長期的に顧客との関係を維持する方向へ経営指針をシフトチェンジさせています。
その際に重要となるのが企業のブランディング、つまりブランドイメージの対外的な発信です。
不動産資産は企業のブランドイメージを形成する重要な要素の一つであるため、これを活用することで、自社のイメージをより強く発信することができます。
例えば、環境に配慮したオフィスビルや地域に開かれた施設の運営は、企業の社会的な責任を対外的に示す手段となるでしょう。
CSR(企業の社会的責任)への関心の高まりとともに、不動産を通じた企業イメージの向上がますます重要視されるようになっています。
3.CRE戦略を実践するメリット

CRE戦略の実践により、企業は多様なメリットを享受できます。
単なるコスト削減にとどまらず、財務改善やブランド価値向上など、企業価値全体の向上につながります。
具体的なメリットとしては、以下のものが挙げられます。
- 戦略の見直しによるコスト削減
- キャッシュフローの改善
- リスクの分散・軽減
- ブランディングによる差別化・企業イメージの向上
- 財務バランスの改善
- 企業の時価向上
- 地域社会への貢献
順にご説明します。
(1)戦略の見直しによるコスト削減
CRE戦略の最も直接的なメリットは、不動産に関連するコストの削減です。
不動産は保有するだけでも維持コストがかかるため、活用しなければコストがかかるだけとなってしまいます。
そこで、事務所や拠点の廃止も戦略として検討することで、大幅な運営コスト削減が可能になります。
例えば、利用率の低い営業所の統廃合や利用されていないスペースの削減により、賃料や維持管理費の大幅な削減が可能です。
また、テレワークの普及に伴い、出社人数を制限するなどオフィススペースを最適化している企業も増えています。
(2)キャッシュフローの改善
遊休不動産の売却や有効活用により、法人のキャッシュフローを改善することができます。
使用していない土地や建物を売却したり賃貸に出したりすることで、資金を得ることができます。
例えば、収益性の低い非事業用不動産を売却し、その資金を収益性の高い事業に再投資することで、法人全体の収益構造を改善するなどの施策も可能です。
また、遊休地を駐車場として活用することで新たな収益源を増やすといった方法も有効でしょう。
これらの資金を本業への投資に回すことで、成長を加速させることができます。
(3)リスクの分散・軽減
CRE戦略により、事業リスクの分散と不動産リスクの軽減を同時に実現することができます。
特に市況変動の大きい業界では、不動産という安定的な収益源を確保することが重要です。
例えば、海運業のように景気変動の影響を受けやすい事業では、保有する不動産を賃貸に回せば賃貸収入という安定したキャッシュフローをもつことができ、リスクを分散することができます。
また、本業が不調な時期でも、不動産からの収益が企業を下支えする効果が期待できるでしょう。
さらに、不動産そのもののリスク管理も重要です。
例えば、特定の地域や物件に集中した不動産の保有では、災害や市場変動の影響を受けやすくなります。
そのため、地理的な分散はもちろん、所有と賃借のバランスを取ることで、これらのリスクを適切に管理できるでしょう。
また、老朽化した建物の建て替えや耐震補強により、資産価値の毀損リスクも軽減することが可能です。
(4)ブランディングによる差別化・企業イメージの向上
CRE戦略に取り組むことで、ブランディングによる差別化や企業イメージの向上を目指すことができます。
自社が保有・利用する不動産は、環境配慮や地域との関わり方、働き方への姿勢といった企業の価値観を社外に対してわかりやすく示すことができるからです。
例えば、ZEB(Net zero energy building)仕様や再生可能エネルギーを導入した環境配慮型オフィスビルに本社機能を集約すれば、環境問題に取り組む企業姿勢をアピールすることにつながります。
また、自社ビルの一部を地域向けのホールやイベントスペース、防災拠点として開放すれば、地域社会とともに歩む企業であることを印象づけることも可能です。
このように、CRE戦略を通じて不動産の持ち方・使い方を設計し直すことで、環境・地域・働き方・文化といった多方面から企業ブランドを強化することができます。
これによって、他社との差別化や企業イメージの向上を期待することができます。
(5)財務バランスの改善
CRE戦略に取り組むことで、自社のお金の出入りや借入金のバランスを整え、財務状況を健全化することが期待できます。
使われていない土地や事業にとって重要度が下がった不動産を計画的に売却すれば、その資金で借入金を返済したり、将来の投資に回したりできます。
これにより、不動産として眠っていた資産を流動性の高いお金として変えられるため、急な投資機会や景気変動にも対応しやすいです。
また、本社ビルなどを売却して長期の賃貸契約に切り替えることで、バランスシートを身軽にしつつ、必要なオフィス機能だけは確保するといった選択も可能です。
このように、CRE戦略を通じて不動産の持ち方を見直すことで、借入れに頼りすぎない財務バランスをつくりやすくなり、結果的に金融機関からの信用度向上や、有利な条件での資金調達にもつながります。
(6)企業の時価向上
適切なCRE戦略の実施は、株式市場における企業評価の向上につながります。
不動産の効率的な活用により収益性が改善すれば、当然ながら株価にもポジティブな影響を与える可能性が高いです。
また、資産の有効活用により、ROA(総資産利益率)などの経営指標も改善し、キャッシュフローの増加と資本コストの削減の相乗効果によって、企業の時価の向上につながっていくでしょう。
(7)地域社会への貢献
CRE戦略を通じて、地域社会への貢献も実現することができます。
例えば、地方に新たな拠点を設けることで、その地域の雇用機会を創出したり、観光客を呼び込む事業に取り組むことで地方経済の活性化につながります。
実例として、パソナグループが本社機能の一部を淡路島に移し、オフィス・観光施設・宿泊施設やレストランの開業支援などを一体で開発しているケースがあります。
これは厳密には「CRE戦略そのもの」というより、地域活性ビジネスと組み合わせた取り組みですが、本社機能の分散や企業ブランド・採用力向上につながる拠点づくりという点では、CRE戦略と非常に親和性の高い事例といえます。
4.CRE戦略の手法

CRE戦略には、様々な実践方法があり、企業の状況や目的に応じて、最適な手法を選択することが重要です。
代表的なCRE戦略の手法としては、以下のようなものがあります。
- 遊休不動産の売却・流動化
- 不動産のリースバック
- 社宅・遊休地の再開発
- 不動産の会社分割・スピンオフ
- 不動産を活用したブランディング戦略
- 地方創生・地域共創型CRE戦略
それぞれの内容や特徴について見ていきましょう。
(1)遊休不動産の売却・流動化
遊休不動産の売却・流動化とは、使用していない土地や建物を売却し、資金化する手法です。
遊休不動産は維持費用がかかる一方で、そのままの状態では収益を生まないため、企業にとって負担となります。
これらを売却することで、まとまった資金を獲得し、本業への投資や負債の返済に充てることができるでしょう。
また、不動産の証券化やREIT(不動産投資信託)への売却などにより、資産を流動化する方法も選択肢として挙げられます。
売却益を成長事業に再投資することで、企業価値の向上を図ることができます。
(2)不動産のリースバック
不動産のリースバックとは、所有している不動産を売却した後、同じ物件を賃借して使用を続ける手法です。
この方法により、物件の使用を継続しながら、売却代金を獲得することができます。
さらに、所有から賃借に切り替えることで、固定資産税や大規模修繕費などの保有コストを削減できるのもメリットといえるでしょう。
特に本社ビルなどのように、使用を継続したいが所有権を手放したいといった物件を保有する企業が実施することが多いです。
リースバックはバランスシートのスリム化にも効果があり、財務の柔軟性を高めることができます。
(3)社宅・遊休地の再開発
社宅・遊休地の再開発とは、利用率の低下した社宅や遊休地を収益物件として再開発する手法です。
土地の用途変更や複合開発により、地域のニーズに合った不動産として生まれ変わらせることが可能です。
例えば、老朽化した社宅を取り壊し、賃貸マンションや商業施設として開発することで、継続的な収益を得ることにつながります。
また、立地が良い遊休地であれば、オフィスビルとして開発することも選択肢となるでしょう。
こういった再開発により、資産価値の向上と収益の獲得を同時に実現することができます。
(4)不動産の会社分割・スピンオフ
不動産の会社分割・スピンオフとは、法人が持っている不動産や不動産関連の事業のみを切り出して、別の法人にまとめる方法です。
本業とは別に「不動産専門の法人」を作るとイメージすれば、わかりやすいでしょう。
この方法をとると、不動産の管理や運営を専門会社に集約できるため、物件ごとのコスト管理や投資判断をきめ細かく行いやすくなります。
その結果、空室対策や修繕計画などを専門的に行えるようになり、不動産の収益性を高めやすくなります。
一方で、本体の法人は、自社のメイン事業に経営資源を集中させることができます。
つまり、「本体は本業に専念し、不動産会社は不動産で稼ぐ」という役割分担がはっきりすることで、グループ全体として経営のメリハリをつける方法です。
(5)不動産を活用したブランディング戦略
不動産を活用したブランディング戦略とは、企業のブランド価値向上を目的とした不動産活用です。
先ほども紹介したように不動産を活用して社会貢献や環境配慮の姿勢を見せることで、ブランドイメージ向上を狙います。
例えば、環境配慮型オフィスの整備は、企業の環境への取り組みを示す象徴となるものです。
また、美術館やギャラリーを併設した施設の運営により、文化的な企業イメージを発信することも可能です。
このように自社が「対外的に持ってほしいイメージ」から逆算した取り組みを不動産に反映させることで、所有不動産がブランディングの発信源となります。
(6)地方創生・地域共創型CRE戦略
地方創生・地域共創型CRE戦略とは、地域社会との共生を重視した不動産活用です。
地方に拠点を設けることで、その地域の雇用創出や経済活性化に貢献することができます。
また、地域の特色を活かした施設運営により、独自の価値を創出するなど地方の町おこしにも役立つでしょう。
例えば、オフィスに地域産品の販売施設を併設したり、地域住民が利用できるコミュニティスペースを設けたりすれば企業と地域の良好な関係を構築することができるでしょう。
また、パソナの例のように本社機能の一部を淡路島へ移転し、そこを拠点とした一大淡路島の開発プロジェクトを立ち上げるような事例もこれに該当します。
5.CRE戦略の具体的な事例

企業がCRE戦略に取り組むことは、自社の財務状態を健全化させることだけでなく、ブランディングなどの対外的な効果も期待することができます。
なお、実際にCRE戦略を導入し、成果を上げている企業は以下の通りです。
- 株式会社商船三井の事例
- いすゞ自動車株式会社の事例
- 日本郵船株式会社と日本郵政グループの事例
大手企業の取り組みから、効果的なCRE戦略の実践方法を学ぶことができるでしょう。
(1)株式会社商船三井の事例
株式会社商船三井は、事業リスクの分散とキャッシュフローの安定のために、CRE戦略を活用しています。
商船三井が実施したのは、段階的な不動産事業の強化および完全子会社化による経営統合です。
2007年、商船三井はグループが保有する資産全体の効率的活用を目的として、ダイビル株式会社と商船三井興産株式会社の不動産建物管理事業を統合しました。
この統合により、両社のマネジメントノウハウの集中と管理コストの削減を実現し、保有・管理する資産のバリューアップを図っています。
商船三井興産の持つ営業力とダイビルの持つリーシング、コンストラクションマネジメントのノウハウを活かし、両社が一体となって新たなビジネスチャンスを追求する体制を構築しました。
14年後の2021年11月、商船三井はダイビルに対して総額約1,213億円のTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表しました。
2022年4月にダイビルは上場廃止となり、同年5月に完全子会社化が完了しています。
この完全子会社化により、グループ内での意思決定を迅速化させ、商船三井グループのネットワークや財務基盤を活用し、国内オフィス賃貸事業の成長投資だけでなく、海外地域での事業拡大も視野に入れた不動産事業強化を図っています。
(2)いすゞ自動車株式会社の事例
いすゞ自動車株式会社は、販売会社が保有する不動産の管理を集約し、各社が本業に集中できる体制を整えるためにCRE戦略を導入しました。
同社のアプローチは、不動産管理機能の集約と外部パートナーとの合弁による専門会社設立です。
グループの不動産関連事業を担当していた「いすゞエステート株式会社」に対して増資を行い、社名を「いすゞネットワーク株式会社」に変更しました。
なお、増資は伊藤忠商事株式会社から受けており、その比率はいすゞ自動車から75%、伊藤忠商事から25%となっています。
この外部パートナーとの合弁により、不動産管理の専門性と効率性を高める体制を構築しました。
新たに設立されたいすゞネットワーク株式会社は、国内の連結販売会社15社と連結事業会社3社の株式を取得しました。
これにより、グループ全体の不動産管理を一元化し、各販売会社は本来担当する販売・アフターサービスに集中できる体制に整備されました。
不動産管理の専門会社への集約により、管理コストの削減と運用効率の向上を実現しています。
(3)日本郵船株式会社と日本郵政グループの事例
日本郵船株式会社は、グループが持つ不動産事業の経営効率化と物流事業への注力を目的にCRE戦略を展開しています。
同社の特徴は、不動産事業の一部売却によるパートナーシップ戦略です。
2021年5月、日本郵船は100%子会社である郵船不動産株式会社の株式51%を、日本郵政不動産株式会社に譲渡すると発表しました。
この取引により、日本郵船は約230億円の譲渡益を2022年3月期決算に計上しています。
日本郵船が保有不動産の有効活用を掲げる一方、日本郵政グループも不動産事業を収益の柱として掲げており、両社の戦略的利害が一致した取引となりました。
株式の51%を譲渡したことで、郵船不動産は日本郵政グループと日本郵船のジョイントベンチャーとなりました。
日本郵政不動産は自社グループの保有不動産の再開発で多くの実績を持ち、また郵船不動産の持つ賃貸事業の知見および管理・運営ノウハウを高く評価しています。
このパートナーシップにより、郵船不動産の更なる事業成長と企業価値向上を実現する体制を構築しました。
6.CRE戦略を実行するステップ

CRE戦略を効果的に実行するには、体系的なアプローチが必要です。
具体的には、以下のステップで進めていきます。
- 自社が所有する不動産資産などの情報の把握
- ポートフォリオの評価
- CRE戦略のプランニング
- 実践
- 戦略の評価と改善
それぞれのステップで意識すべきポイントについても合わせて解説します。
(1)自社が所有する不動産資産などの情報の把握
CRE戦略の第一歩は、保有するすべての不動産資産の現状を正確に把握することです。
具体的には、所有・賃借している土地や建物の所在地、面積、用途、評価額などの基本情報を整理しましょう。
さらに、各物件の利用状況や収益性、維持管理コスト、契約条件なども詳細に調査します。
この段階で情報の正確性を確保することがその後の戦略立案の精度を左右するため、時間をかけて丁寧に実施することが必要不可欠です。
(2)ポートフォリオの評価
収集した情報を基に、不動産ポートフォリオ全体を評価します。
具体的には、各物件の収益性、リスク、戦略的重要性などを多角的に分析しましょう。
例えば、遊休不動産や低収益物件の特定、過剰なスペースの洗い出しなどを行います。
また、地理的な分散状況や所有・賃借のバランス、用途別の構成比なども評価の対象です。
専門家の手を借りながら、自社不動産ポートフォリオを客観的に評価しましょう。
(3)CRE戦略のプランニング
ポートフォリオ評価の結果を基に、具体的なCRE戦略を立案します。
企業の経営目標や事業戦略と整合性を取りながら、不動産活用の方針を決定しましょう。
具体的には、売却や再開発、リースバック、会社分割など、各物件に最適な手法を模索していきます。
また、同時に実行の優先順位やタイムライン、必要な予算、期待される効果なども明確にしましょう。
(4)実践
策定した計画に基づき、具体的な施策を実行に移します。
不動産の売却や購入、賃貸契約の見直し、組織改編など、計画した内容を着実に進めます。
実行段階では、関係者との調整や法的手続、税務上の検討など、様々な課題が発生することがあるため、柔軟に対応しながら進めていきましょう。
また、進捗状況を定期的に経営層に報告し、必要に応じて計画の修正を加えることも大切です。
(5)戦略の評価と改善
実施したCRE施策の効果を定期的に評価し、必要に応じて改善を図ります。
設定した目標に対する達成度を測定し、課題や改善点を特定し、また、市場環境や企業の状況変化に応じて、戦略の見直しも必要です。
CRE戦略は継続的な取り組みであるため、PDCAサイクルを回しながら最適化を進めていきましょう。
また、年1回以上の定期的なレビューを実施し、常に最新の経営環境に対応した戦略を維持することが重要です。
7.CRE戦略を成功に導くポイント

CRE戦略を成功させるには、上記のような流れに沿って、計画的に進めていくことが最も重要です。
それに加えて、以下のようなポイントも意識しましょう。
- 経営層主導で意思決定を下す
- データドリブンなポートフォリオ管理を行う
- M&Aを活用した資産再編を進める
- PM(プロパティマネジメント)で運用の最適化を図る
- ESG・地方創生を取り込んだブランディング戦略を策定する
順にご説明します。
(1)経営層主導で意思決定を下す
CRE戦略は、経営トップの強いコミットメントが不可欠です。
不動産の売却や再編は企業の重要な経営判断を伴うものであり、担当部門だけでは推進が困難です。
経営層が自ら方針を示し、重要な意思決定に責任を持つことで、事業部門・管理部門・グループ会社をまたいだ調整が進みやすくなり、思い切った再編策も実行しやすくなります。
また、CRE戦略を経営戦略の一部として位置づけることで、全社的な取り組みとして推進を図ることもできます。
中期経営計画や全社の投資方針と関連させて位置づけることで、各部門が自分ごととして捉えやすくなり、全社的な取り組みに引き上げることができます。
(2)データドリブンなポートフォリオ管理を行う
ポートフォリオ管理の際は、データドリブン(客観的な情報やデータに基づいたもの)であることを意識しましょう。
担当者独自の視点での評価では、どうしても客観性が不足して正しい判断ができないことがあるためです。
各物件の収益性やコスト、リスクなどを数値化したうえで、定量的に評価するのがポイントです。
そのうえで、不動産情報をITシステムで一元管理し、空室の発生やコスト増加などの変化をタイムリーに把握できるようにすると、売却・投資・用途変更などの判断がしやすくなります。
こうしたデータドリブンなポートフォリオ管理を徹底することで、感覚に頼らない論理的な戦略立案と、継続的な見直し・改善につなげることが可能です。
(3)M&Aを活用した資産再編を進める
M&Aは、CRE戦略をスピードアップさせるための有力な手段です。
他社やグループ会社の買収や統合により、バラバラに分散している不動産や不動産関連業務を一つのグループ内に集約することができます。
これにより物件の管理運営をまとめて見直すことができ、重複した機能や無駄なコストを省きながら資産構成を整理することが可能です。
また、不動産事業だけを切り出して別法人として独立させる「スピンオフ」や、不動産会社・ファンドなど外部パートナーと共同で「ジョイントベンチャー(共同出資会社)」を設立する形もあります。
こうした枠組みを使うことで、不動産の専門性を持った組織をつくりやすくなり、大規模な開発や再生プロジェクトにも取り組みやすくなるでしょう。
(4)PM(プロパティマネジメント)で運用の最適化を図る
専門的なプロパティマネジメントの導入により、不動産運用の質を向上させることにつながります。
プロパティマネジメントとは、物件の維持管理から賃貸管理、テナント対応まで、総合的な運用を行うことです。
プロパティマネジメントに専門家の知見を活用したり、業務を外部に委託したりすることで、収益の最大化とコストの最適化を実現することができるでしょう。
自社の人員や時間を不動産部門にさかずに、本業のビジネスへ集中させることができるため、経営面から見ても効率的な方法です。
(5)ESG・地方創生を取り込んだブランディング戦略を策定する
ESG(環境・社会・ガバナンス)への配慮は、現代の企業経営において不可欠な要素です。
そのため、CRE戦略において環境に配慮したオフィスの運営、地域に貢献する施設などにより、企業の社会的な価値を高めてブランディングを向上させることができるでしょう。
また、ESGやSDGsを意識したCRE戦略により、社会貢献をしている企業というブランディングイメージを創出し、顧客との関係維持にも役立ちます。
さらに、顧客だけでなく投資家からのESG評価向上にもつながり、資金調達面でのメリットも享受できる可能性があるでしょう。
まとめ
CRE戦略は、現代の企業経営において非常に重要な要素となっています。
特に不動産が総資産に占める割合の高い企業では、適切なCRE戦略が企業価値に大きな影響を与えます。
効果的なCRE戦略のためには、現状把握からポートフォリオ評価、計画立案・実行、評価・改善というステップを着実に進めることが重要です。
また、経営層主導の意思決定、データドリブンな管理、M&Aの活用など、成功のポイントを押さえることで、より大きな成果を得られるでしょう。
記事で紹介した事例も参考に、自社が目指す目標を明確にしたうえで、CRE戦略を進めていきましょう。