不動産の売却にかかる税金とは?計算方法や必要となる費用についても解説
「不動産を売却するときにはどのような税金がかかるのか」
「税金や費用を抑えた上で不動産を売却するために意識すべきことは?」
所有している不動産の売却を検討される際には、税金の負担などについて疑問や悩みをお持ちの方もいると思います。
近年、都市部を中心として、土地などの不動産価格が高騰しています。
そのようななかで、なるべく高い金額で不動産を売却したいところですが、売却代金がそのまま売主の手元に残るわけではありません。
土地や家屋などの不動産を売却する際には、売買の当事者(売主と買主)双方に納税義務が発生します。
本記事では、不動産を売却する際に売主が支払うべき税金の種類や計算方法について解説します。
なお、税金のほかにも、場合によっては売主が支払わなければならない費用がいくつかあります。
不動産売却に必要な税金と費用をあらかじめ把握することで、計画的に売却を進めることが可能です。
本記事では税負担や費用を抑えるためのポイントについても併せて解説しますので、これから所有している不動産の売却を検討される方の参考となれば幸いです。
1.不動産を売却する際にかかる税金と計算方法

不動産とは、多くは土地や家屋(建物)のことをいいます。
この不動産を売却した場合、売却代金が高額になることもあり、不動産取引には大きなお金の動きが伴うことになるのです。
そのため、不動産取引には、いくつかの税金が課される点に注意が必要となります。
特に不動産の売主には、以下のような種類の税金が課されます。
- 印紙税
- 登録免許税
- 譲渡所得税
- 復興特別所得税
- 住民税
- 消費税
それぞれの内容や計算方法について解説します。
(1)印紙税
印紙税とは、売買契約の書類を作成した際に発生する税金で、売買契約書に収入印紙を貼付することによって納税を行います。
そのため、売買契約書を作成する時点で必要となる支出であることに留意しましょう。
通常、売主と買主で折半して負担します。
印紙税の具体的な金額は、契約の金額によって変動し、以下のように定められています。
| 契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
| 1万円超え10万円以下 | 200円 | 200円(軽減措置なし) |
| 10万円超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
| 50万円超え100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
| 100万円超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
| 500万円超え1000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
| 1000万円超え5000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5000万円超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
| 1億円超え5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
| 5億円超え10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
| 10億円超え50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
| 50億円超え | 60万円 | 48万円 |
なお、契約金額が1万円以下の場合には、印紙税は課税されません。
また、契約金額が10万円を超える場合には、上記の表に従い、印紙税が軽減されることも押さえておきましょう。
軽減税率は、売買契約書だけでなく、金額を変更する際に作成される変更契約書や補充契約書など、売買契約に関連して作成される様々な書類にも適用されます。
もっとも、軽減税率が適用されるのは、平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成されるものです。
(2)登録免許税
登録免許税は、不動産登記の名義変更を行うときに課税されるものです。
不動産の所有権は、売却の際に売主から買主に移転しますが、その事実は不動産登記の手続きを行わなければ当事者以外の第三者に主張することができないとされています(民法177条)。
そのため、不動産の売却の際には、必ず不動産登記の名義を売主から買主に変更する必要があり、その際に登録免許税の納付が求められるのです。
所有権移転による登録免許税は、買主に納税義務が課されるため、売主は負担する必要はありません。
しかし、売却する不動産に抵当権が設定されている場合には、抵当権の抹消登記を行う必要があり、抹消登記に関する登録免許税を売主が支払わなければならないことに注意が必要です。
抵当権とは、住宅ローンなどを利用する際に金融機関などの債権者が設定する権利のことです。
債権者は、ローンの残債務を回収できなくなった場合には、不動産に設定されている抵当権を実行し、競売にかけることで残債務の回収を図ります。
不動産取引では、抵当権が設定された状態の不動産であっても売買の対象となりますが、買主に抵当権の負担を移転させないように、売主側で抵当権の抹消登記を行った上で引渡しを行うことが一般的です。
そのため、不動産の売却代金により残債務を返済する場合や、売却前に残債務を返済済みの場合には、売主はローンを完済した上で抵当権の抹消登記を行わなければなりません。
抵当権の抹消登記手続きに必要な登録免許税は、不動産1つにつき1,000円と決められています。
なお、土地と建物は別個の不動産として扱われるため、土地1筆と建物両方に抵当権の登記がされている場合には、合計で2,000円の登録免許税が必要となります(土地が2筆に分かれている場合には3,000円)。
抵当権の抹消登記に係る登録免許税は、不動産決済の場合に売主が負担することが一般的です。
具体的には、法務局で登記申請を行う際に申請書に必要な金額の収入印紙を貼付することによって納付します。
電子納付や窓口での現金納付も可能です。
(3)譲渡所得税
譲渡所得税は、不動産を売却した際に得た利益(譲渡所得)に対して発生する税金です。
以下の算定式に基づいて金額が算出されます。
- 譲渡所得税=譲渡所得×税率
譲渡所得は、以下に基づいて算出されます。
- 譲渡所得=売却価額−(取得費+譲渡費用)
取得費は、売却の対象となる不動産を取得した時点での価額です。
取得した時期が古く、その価額が明らかではないときには、売却代金の5%相当額を取得価額として計算できます。
また、譲渡費用には、売買を仲介した不動産仲介業者に支払う仲介手数料や売買契約書に貼付する印紙税の金額を含めることができます。
詳細は後述しますが、譲渡所得から控除が認められる場合があり、これによって譲渡所得税を節税できるケースがあるのです。
なお、譲渡所得税の税率は、その不動産を所有している年数によって変動します。
具体的には、以下の区分で税率が異なるため、注意が必要です。
| 所有年数 | 譲渡所得税の税率 |
| 短期(5年以下) | 30% |
| 長期(5年を超える) | 15% |
なお、所有年数は、不動産を売却した年の1月1日時点での所有年数を基準として定められます。
例えば、不動産を取得したのが2021年12月1日であり、売却が行われたのが2026年12月15日である場合には、2026年1月1日時点での所有年数は5年を超えないため、短期の税率が適用されます。
しかし、売却が行われたのが2027年である場合には、2027年1月1日時点で所有年数が5年を超えているため、長期の税率が適用されるのです。
このように、売却時点での所有年数が基礎となるわけではないことにも注意が必要となります。
(4)復興特別所得税
復興特別所得税は、東日本大震災の復興財源を確保するために所得税額に対して発生する税金です。
譲渡所得税に対して付加される税金であり、以下の算定式で算出されます。
- 復興特別所得税=譲渡所得税×2.1%
例えば、不動産の所有年数が5年を超えない(短期)場合の復興特別所得税は、以下のように求めることができます。
- 復興特別所得税=譲渡所得×30%×2.1%=譲渡所得×0.63%
そのため、譲渡所得を基準とした場合には、不動産の所有年数に応じて以下のような税率として計算することも可能です。
| 所有年数 | 譲渡所得を基準とした場合の復興特別譲渡税の税率 |
| 短期(5年以上) | 0.63%(30%×2.1%) |
| 長期(5年を超える) | 0.315%(15%×2.1%) |
なお、復興所得税は譲渡所得税とは別に計算を行いますが、納付する際には合算して支払うことが一般的です。
例えば、所有年数が5年以下(短期)の場合、譲渡所得税と復興特別所得税を合算する計算は、以下のようになります。
- (譲渡所得×30%)+(譲渡所得×0.63%)=譲渡所得×30.63%
復興特別所得税は、譲渡所得税と合わせて、売却を行った年の翌年の2月16日から3月15日の間に売主が計算した上で確定申告によって納付する必要があります。
(5)住民税
住民税は、譲渡所得税とともに発生する税金です。
具体的には、以下の算定式によって税額が算出されます。
- 住民税=譲渡所得×税率
算定方法は譲渡所得税と同じですが、不動産の所有年数によって、以下のような税率が適用されます。
| 所有年数 | 住民税の税率 |
| 短期(5年以下) | 9% |
| 長期(5年を超える) | 5% |
なお、住民税に関しても、譲渡所得税と復興特別所得税とともに、売主は売却の年の翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告を行う必要があります。
もっとも、住民税は確定申告を行った後であれば、特別な手続きを行う必要はありません。
住民税については、売却の年の翌年の5月以降に市区町村から納付書が送付されるため、一括または年に4回の分割払いによって納付します。
このように、住民税だけは納付の時期が遅れてやってくることに注意しましょう。
(6)消費税
マイホームの一戸建て、マンションを売却する場合や、土地のみを売却する場合には、消費税が売主に課税されることはありません。
しかし、売主が個人事業主または法人であり、事業用(投資用)の建物を売却する際には、消費税が課税されます。
そのため、賃貸用マンションや店舗などを事業として所有しており、その不動産を売却する際には、「建物部分の売却金額」に対してのみ消費税が課されることになります(※土地の売買は非課税のため、消費税はかかりません)。
このように、個人の場合であっても、不動産の売却に事業性が認められる場合には、消費税の課税対象となることに留意しましょう。
2.不動産を売却する際にかかるそのほかの費用
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上記のように、不動産を売却する場合には、売主にも一定の税金負担が生じます。
これに加えて、売却活動から売買契約の締結に至るまでは、税金のほかにも以下のような費用が必要となる場合があることも押さえておきましょう。
- 仲介手数料
- 住宅ローンの一括繰上返済に関する手数料
- 土地の測量費用
- 修繕・リフォーム・ハウスクリーニング費用
- 建物の解体費用
これらの費用のなかには、譲渡所得を算出する上で、「譲渡費用」に含めることができるものもあります。
しかし、売主が一時的に自己負担しなければならないものでもあるため、売却活動のなかで必要となる費用の項目と相場を把握しておくようにしましょう。
なお、不動産の売却の流れや売主が意識すべきポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
(1)仲介手数料
不動産の売却を仲介業者に依頼する場合には、その不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。
不動産の売却方法には、主に以下の二つがあります。
| 不動産の売却方法 | 特徴 |
| 仲介 | 仲介業者に買主を探してもらい、不動産を売却する |
| 買取 | 買取業者に直接不動産を売却する |
このうち、買取による不動産の売却では、その買取業者が買主となり、仲介手数料は必要ありません。
しかし、仲介による売却を行う際には、仲介業者に手数料を支払う必要があり、これが売却に関する費用となります。
なお、仲介手数料については、不動産の売却価額に応じて以下のような上限が設けられています。
| 不動産の売却価額 | 仲介手数料の上限の計算式 |
| 200万円以下 | 売却価額×5%(+税) |
| 200万円超え400万円以下 | 売却価額×4%+2万円(+税) |
| 400万円超え | 売却価額×3%+6万円(+税) |
また、低廉な空家等(物件価格が800万円以下の宅地建物)の売却の際には、30万円(+税)が上限になります。
そのため、無制限に手数料の負担が増大するというわけではありません。
仲介手数料は、売買契約が成立した時点で50%を支払い、不動産の決済時に残りの50%を支払うことが一般的です(媒介契約書、手数料支払約定書等の締結が条件になります)。
なお、仲介手数料については、全額を譲渡費用として含めることができます。
譲渡所得税の計算の際には、仲介手数料を譲渡費用として計上することを忘れないようにしましょう。
(2)住宅ローンの一括繰上返済に関する手数料
住宅ローンの返済が残っている状態で不動産を売却する場合には、売主が残債務を完済した上で抵当権の抹消登記を行う必要があります。
このときに、抹消登記の登録免許税のほかに、金融機関に対して住宅ローンの一括繰上返済に関する手数料を支払わなければならない場合があることに注意が必要です。
これは、住宅ローンを一括繰上返済することで、金融機関が本来であれば受け取ることができた利息分に対する補填という側面があるとされています。
金融機関によっても異なりますが、窓口やインターネットバンキングなどで支払いを行うことができます。
また、手数料の金額は、住宅ローンを借りる際に金消契約に記載されますが、1万~3万円程度が相場といわれています。
具体的な金額を知りたい場合には、住宅ローンを組んだ金融機関に対して確認しましょう。
なお、一括返済に関する手数料は不動産譲渡に伴い支払うことが多いものですが、不動産譲渡するために必要な費用とは言えないので、手数料の金額は譲渡費用に含めることができないとされています。
また、抵当権の抹消登記に関する登録免許税についても、上記の理由から譲渡費用に含めることができないため、注意が必要です。
(3)土地の測量費用
不動産の売却を行う場合、土地の測量は必ずしも必要というわけではありません。
しかし、以下のようなケースでは、売主は土地の測量を行ったほうがよいといえます。
- 土地の境界が分からない(境界標が一部または全部無い、境界確認書類が無い)
- 土地自体が高額である
- 登記簿上の面積と実際の土地の面積に違いがある(縄延び、縄縮み)
これは、購入後の境界トラブルを防くことで、買主が安心して不動産を購入することができるようにするためです。
測量を行うことで、土地の正確な面積と境界を把握することができ、適正な売却価額を算出することにもつながります。
これによって、売主と買主の双方が納得して売却を進めることが可能です。
土地の測量には、一般的に1~3か月程度の期間を要し、その費用は数十万~100万円程度が相場となります。
また、測量費用については、売主側で負担することが一般的です。
なお、土地の測量が売却のために必要であると認められる場合には、譲渡費用として計上することができます。
売却を見越して過去に測量を行っていた場合など、測量を行った時期と売却のタイミングが離れすぎているケースでは、測量費用を譲渡費用に含めることはできません。
(4)修繕・リフォーム・ハウスクリーニング費用
建築物の修繕やリフォームなどを行うことがあります。
売買契約が成立するまでの間が長引けば、売主が不動産の管理を行う必要性があるからです。
修繕やハウスクリーニングなどの費用は売主の負担となり、一般的には譲渡費用として計上することはできません。
これは、売却を行わなかったとしても、当然に発生する維持管理費用であり、譲渡の際に必要となった費用とはいえないからです。
なお、例外的に、買主から引渡しに際してリフォームやハウスクリーニングなどを要請されて売主が行った場合には、譲渡費用として含めることができる可能性もあります。
もっとも、どのような場合に譲渡費用として計上することができるのかについては、専門的な知識が必要です。
税金の計算で不明な点がある場合には、税理士などの専門家のアドバイスやサポートを受けるようにしましょう。
(5)建物の解体費用
不動産の売却では、土地と建物を一括で売却することもあれば、土地上の建物を解体し、土地のみを売却することもあります。
このように、更地で土地を売却する場合には、建物の解体費用が必要となることを押さえておきましょう。
特に建物の築年数が30年以上を経過している場合には「古家」と呼ばれ、土地と一括で売り出しを行っても、買い手がつかないケースも少なくありません。
そのような場合には、建物を解体して更地にすることで、買い手が現れるケースもあります。
建物の解体費用は、構造ごとに坪単価が異なります(アスベストが含有されている建物の解体費用はさらに高額になります)。
建物の状態や立地などの条件(重機が入るかどうか、トラックを止める駐車場代の相場がいくらか)によっても解体費用は変動するため、あらかじめ見積もりをとった上で進めることがおすすめです。
なお、建物の解体費用は売主が負担することが一般的ですが、譲渡所得税の計算の際には、解体費用を譲渡費用に含めることができます。
3.税金や費用を抑えることができる主なケース

不動産の売却では、売主も様々な税金や費用を負担しなければならないことが多く、特に売却代金が高額になればなるほど税金の負担も大きくなるため、最終的に手元に残るお金がどのくらいの金額になるのかについて、シミュレーションをすることも重要といえます。
もっとも、税金や費用は、工夫次第で負担を軽減することが可能です。
具体的には、以下のような場合には、税金や費用を抑えることができる可能性があります。
- 電子契約を活用する
- 売却価額が取得価額を下回るケース
- 特別控除が利用できるケース
順にご説明します。
(1)電子契約を活用する
売買契約を電子契約によって締結することで、書面の作成が不要となります。
これによって、書面に収入印紙を貼付する必要がなくなり、印紙税の負担をなくすことが可能です。
特に印紙税の納税額は、不動産の契約金額に応じて高額になります。
もっとも、印紙税の額は譲渡所得税を算出する際に譲渡費用として計上することができるため、税負担の軽減効果としてはそれほど大きくはありませんが、譲渡所得税を申告するまでの自己負担額を軽減するという観点では、電子契約の検討がおすすめです。
(2)売却価額が取得価額を下回るケース
譲渡所得税・復興特別所得税・住民税の三つは、不動産の売却によって利益が生じることで発生します。
先ほども述べたように、売却による利益(譲渡所得)は、以下の算定式に基づいて算出します。
- 譲渡所得=売却価額−(取得費+譲渡費用)
取得費は、取得価額から経過期間分の減価償却費相当額を控除して計算します。
ただし、土地は減価償却の対象外であるため、土地の取得費は購入時の価額のままです。
減価償却費を控除するのは建物部分のみとなります。
売却価額が取得費を下回った場合には、売却による利益が生じないため、譲渡所得税・復興特別所得税・譲渡所得にかかる住民税がかかりません。
譲渡所得を正確に算出するためには、取得費と譲渡費用を正しく計算することが重要です。
取得費が分からない場合には、売却価額の5%相当額が取得費(概算取得費)とされます(5%の概算取得費から減価償却を行うことができないことに注意してください)。
しかし、この金額を用いて計算を行うと、譲渡所得が高額になるケースが多いです。
そのため、購入時の売買契約書など、取得価額が確実に分かる資料を準備し、計算を行うことが重要といえます。
また、譲渡費用に含めることができる支出についても、漏れなく計上することが大切です。
なお、売却による利益が生じた場合でも、次に述べる特別控除制度を利用できる場合には、税金の負担を軽減することが可能です。
(3)特別控除が利用できるケース
不動産の売却によって利益が生じた場合でも、特別控除の制度を利用することで、譲渡所得税を軽減できるケースがあります。
例えば、売却した不動産が居住用の財産(マイホーム)である場合には、所有年数に関わらず、譲渡所得の額から3,000万円を控除して税金の計算を行うことが可能です。
そのため、売却による利益が生じた場合でも、その金額が3,000万円を下回る場合には、譲渡所得税などがかからないことを押さえておきましょう。
また、新たに購入したマイホームの金額が売却額を上回っている場合に税金を繰り延べできる「買換え特例」もありますが、こちらは「所有期間が10年を超えていること」や「売却代金が1億円以下であること」など、3,000万円特別控除よりも要件が厳しく設定されています。
もっとも、3,000万円の控除特例とは異なり、納税の負担自体がないわけではなく、あくまで納税の負担を先送りにしているにとどまることに注意が必要です。
このほか、相続した空き家を売却する際には、一定の要件を満たした場合に限り、譲渡所得から3,000万円を控除することができる特例(空き家に係る譲渡所得の特別控除)が設けられています。
主な要件として、1981年5月31日以前に建築された家屋であること・相続開始から3年を経過する日の属する年末までに売却すること・売却価格が1億円以下であることなどが挙げられます。
要件が複数あり適用可否の判断が必要なため、詳細は専門家にご確認ください。
これらの特例を利用することで、税金の負担をなくしたり軽減したりすることができることもありますが、買い換えた住宅の住宅ローン控除が使えなくなることに注意が必要です。
これらの特例がどのような場合に利用することができるのかについては、個別の特例の適用要件をあらかじめ確認することが重要です。
4.売却を行う際に検討すべきポイント

不動産をなるべく高い金額で売却したい場合には、不動産の需要と供給のバランスを見極めることが重要です。
検討の際には、以下のようなポイントについて意識しましょう。
- 不動産市況を確認する
- 売却する不動産の所有期間を把握する
- 利用できる控除等の特例の内容と要件を確認する
- 適切な売却方法を選択する
順にご説明します。
(1)不動産市況を確認する
不動産も取引の対象である以上、その価格は需要と供給のバランスによって定まります。
そのため、不動産の需要と供給に関する動向を把握したうえで売却のタイミングを検討することが重要です。
特に不動産の需要や価格は、経済や政策の影響を受けて変動することが多いです。
また、物件の所在地や地域、物件のタイプ(戸建て、マンションなど)によっても異なります。
これらの事情を総合的に考慮し、需要の高いタイミングで売却を行うことで、希望価格に近い金額で売却を進めることができるでしょう。
なお、不動産の価値の算定や市場動向の分析には、高度な専門知識が求められます。
自分で判断するのは難しいので、不動産会社などの不動産の専門家に相談することがおすすめです。
(2)売却する不動産の所有期間を把握する
不動産は、売却すれば終わりではなく、売却によって生じた利益に応じて税金を支払わなければなりません。
特に売却の利益に対して課税される譲渡所得税や復興特別所得税、住民税などの負担は、高額になる傾向があります。
これらは、売却する不動産の所有期間によって税率が変動し、5年を超える所有期間である場合には、税金の負担が軽減されます。
不動産の所有年数も考慮しながら売却のタイミングを決めるようにしましょう。
(3)利用できる控除等の特例の内容と要件を確認する
不動産の売却に関して発生する税金は、特例を利用することで軽減できる場合があるため、自分が利用できる控除等の特例の内容やその要件について、あらかじめ情報を収集しておきましょう。
なお、控除等の特例を利用して税金の免除や軽減を受けることができる場合でも、確定申告のタイミングで特例を利用することを申告しなければなりません。
申告を行わなかった場合には、控除の特例等が適用されず、それによって払いすぎた税金が戻ってこないリスクもあるため、注意が必要です。
(4)適切な売却方法を選択する
不動産の売却方法には仲介と買取の二つがあります。
それぞれには特徴やメリット・デメリットがあるため、不動産売却の目的や優先する要素に応じて、適切な方法を選択することが大切です。
仲介による不動産売却では、仲介業者に買い手探しを依頼することになり、自分で買い手を探す必要はありません。
また、売却価額は売主が決めることができ、適正な価格で売買契約を結ぶことができる可能性が高まります。
しかし、すぐに買い手が見つかるとは限らず、2~3か月程度の期間を要することが一般的です。
また、不動産の場所や市況によっては、1年~数年単位の時間を要することもあり、その間は不動産をお金に換えることはできませんし、その間にも固定資産税等の費用負担が必要になります。
これに対して、買取の場合には、不動産会社が買主となり、すぐに売買契約を締結することが可能なので、売却活動が1か月以内に完了することも珍しくありません。
特に買い手がつきにくい郊外の土地や相続などによって取得した土地をすぐに現金化したい場合には、仲介よりも買取による売却を行うことで、時間的なコストを削減することにもつながるでしょう。
もっとも、買取による売却では、仲介による売却と比較すると売却価額が低くなる傾向があるため、複数社に査定を依頼し、納得のいく条件を比較しながら検討することがおすすめです。
まとめ
本記事では、不動産の売却に関して売主が支払う必要がある税金の種類や計算方法などについて解説しました。
不動産の売却を行い、売却益が生じた場合には、譲渡所得税や住民税などの税金を支払う必要がありますが、譲渡所得税に関しては免税や税負担の軽減を受けることができる場合もあるため、特例の内容や要件をあらかじめ把握しておくことが大切です。
また、売却には一定のコストがかかることもあり、そのコストを譲渡費用として計上できるかどうかはケースバイケースです。
不動産の売却には様々な知識が必要となるため、売主が一人で進めることには限界もあるでしょう。
そのような場合には、まずは経験が豊富な不動産会社に相談することをおすすめします。
監修者
稲葉 孝史
税理士
株式会社シルスフィア会計事務所 代表取締役。シルスフィア税理士事務所 代表税理士。
中小企業の会計税務業務に加え、SPCを利用した不動産証券化や事業再生などの特殊業務に従事している。過去には、不動産証券化協会(ARES)認定マスター制度の資格試験において、テキスト執筆や講師、試験問題作成委員などを担当した経歴を持ち、不動産証券化分野で豊富なノウハウと実績を有する。
株式会社シルスフィア会計事務所 代表取締役。シルスフィア税理士事務所 代表税理士。
中小企業の会計税務業務に加え、SPCを利用した不動産証券化や事業再生などの特殊業務に従事している。過去には、不動産証券化協会(ARES)認定マスター制度の資格試験において、テキスト執筆や講師、試験問題作成委員などを担当した経歴を持ち、不動産証券化分野で豊富なノウハウと実績を有する。
監修者
塚田 拓士
不動産鑑定士
新卒で東京国税局に入局し、相続税の税務調査を担当しながら不動産鑑定士試験に合格。2007年にフィンテックグローバル(FGI)に入社し、事業再生、事業承継投資やPMI等を経験したのち、不動産M&Aによる投資事業を始め、FGIの主要事業に育てた。現在は不動産M&Aや投資商品の販売を推進している。
新卒で東京国税局に入局し、相続税の税務調査を担当しながら不動産鑑定士試験に合格。2007年にフィンテックグローバル(FGI)に入社し、事業再生、事業承継投資やPMI等を経験したのち、不動産M&Aによる投資事業を始め、FGIの主要事業に育てた。現在は不動産M&Aや投資商品の販売を推進している。
