不動産売却の流れを完全解説|7ステップでわかる売却成功のポイント
「不動産を売却するときの流れについて知りたい」
「売却の手続きに必要な期間や注意点は?」
ご自身で所有されている不動産を売却することを検討されている方の中には、このような疑問や不安をお持ちの方もいると思います。
不動産売却はすべての人が経験するというわけではないため、進め方や必要書類、かかる期間など、わからないことが多くて不安になる方も少なくないでしょう。
この記事では、不動産売却の全体的な流れを7つのステップに分けてわかりやすく解説します。
各ステップのポイントや注意点を理解しておけば、見通しが立ち、安心して売却活動を進めることができるでしょう。
最後まで読めば、事前準備から確定申告まで、不動産売却に必要な知識を網羅的に把握することができます。
もし売却対象が法人が所有する不動産である場合、通常の売買(仲介)だけでなく、不動産M&Aという手法も選択肢に入ります。
税金面で大きなメリットが出るケースがあるため、通常の売却と合わせて検討することをおすすめします。
1.不動産売却の全体の流れ

不動産売却は、事前準備から引渡し・確定申告まで、大きく七つのステップで進みます。
一般的に、売却活動を開始してから引渡しまでの期間は3〜6か月程度が目安とされていますが、物件の条件や不動産市況によっては長引くケースもあることに注意が必要です。
売却の全体的な流れは、以下の通りです。
- 事前準備をする
- 不動産会社に査定を依頼する
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 売却活動を行う
- 条件交渉と売買契約を結ぶ
- 決済と物件の引渡しを行う
- 確定申告などの売却後の手続きを行う
順にご説明します。
2.【STEP1】事前準備をする

不動産の売却を成功させるためには、売却活動を始める前の準備が非常に重要です。
この段階で目的や優先順位を明確にし、必要な情報を整理しておくことで、その後のステップをスムーズに進めることができます。
具体的には、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 売却の目的を明確にする
- 高く売るか早く売るかの優先度を決める
- ローン残高と諸費用を洗い出す
- 最低売却額を試算する
- 必要書類をリストアップして準備を進める
- 売却後の予定と資金計画のたたき台を作る
順にご説明します。
(1)売却の目的を明確にする
まず、なぜ不動産を売却するのかという目的を明確にしておくことが大切です。
例えば、住み替えや相続、資金調達など、売却理由によって最適な進め方や優先すべき条件は異なります。
目的が曖昧なまま売却活動を始めると、途中で判断に迷ったり、不利な条件で契約してしまったりするリスクが高まるでしょう。
売却理由を整理しておくことで、不動産会社へ相談を行う際にもスムーズになり、的確なアドバイスを受けやすくなります。
(2)高く売るか早く売るかの優先度を決める
不動産売却では、「できるだけ高く売りたい」と「できるだけ早く売りたい」という二つの希望が生じやすいものの、両立が難しいケースも少なくありません。
高く売ることを優先すれば売却期間が長引く可能性があり、早く売ることを優先すれば価格を下げる必要が出てくる可能性があるからです。
また、転勤や新居への入居日などの期限がある場合には、スケジュールを優先した計画が必要になります。
ご自身の状況に合わせて、どちらを重視するかを事前に決めておくことで、売出価格の設定や値下げ判断の基準が明確になるでしょう。
(3)ローン残高と諸費用を洗い出す
住宅ローンや不動産投資ローンが残っている場合は、現在の残高を正確に把握しておく必要があります。
不動産を売却する際は、原則としてローンを完済して抵当権を抹消しなければなりません。
また、売却には仲介手数料や印紙税、登記費用、ローンの繰り上げ返済手数料などの諸費用がかかるため、これらを含めた総額を試算しておくことが大切です。
金融機関から送付される「残高証明書」や「返済予定表」をあらかじめ確認し、売却価格との兼ね合いをシミュレーションしておきましょう。
(4)最低売却額を試算する
ローン残高と諸費用を把握したら、最低限必要な売却価格を算出しておきます。
この「最低売却価格」を明確にしておくことで、価格交渉の際に判断の軸ができ、安易な値下げを防ぐことができるでしょう。
例えば、ローン残高が2,000万円、諸費用が150万円の場合、最低でも2,150万円で売却しなければ返済負担が残ってしまうことになります。
そのため、新たに物件を購入する場合は、購入時にかかる費用も考慮に入れて、余裕を持った資金計画を立てることが望ましいです。
(5)必要書類をリストアップして準備を進める
不動産売却では、査定依頼から決済・引渡しまで、様々な書類が必要になります。
書類の中には取得に時間がかかるものや紛失していた場合に再発行が必要なものもあるため、なるべく早期に準備を始めることが重要です。
主な必要書類としては、登記済権利証(登記識別情報)、固定資産税納税通知書、物件の図面・間取り図、建築確認済証などが挙げられます。
不動産会社に査定を依頼する際に必要な書類を確認し、余裕を持って揃えておくことで、売却活動をスムーズに進められるでしょう。
(6)売却後の予定と資金計画のたたき台を作る
売却代金をどのように使うのかについても、おおまかな計画を立てておく必要があります。
住み替えの場合は、売却と購入のタイミングをどのように調整するかが重要なポイントになるでしょう。
例えば、「売り先行」で進めれば資金計画が立てやすい反面、仮住まいが必要になる可能性があります。
また、「買い先行」では新居を先に確保できるものの、資金繰りに注意が必要です。
いずれの場合も、売却代金の使い道や住み替え先の目処を事前に検討しておくことで、落ち着いて売却活動に臨めるようになります。
3.【STEP2】不動産会社に査定を依頼する

事前準備が整ったら、不動産会社に査定を依頼して売却価格の目安を把握します。
査定価格は不動産会社によって異なることもあるため、複数社に依頼して比較検討することが重要です。
具体的には、以下のポイントを意識しましょう。
- 自分で近隣の売り出し価格や成約事例を調べる
- 査定を依頼する不動産会社の候補を絞り込む
- 机上査定でおおよその価格帯を把握する
- 訪問査定で成約に近い価格を確認する
- 各社の査定額とその根拠を一覧で比較する
- 相場から大きく外れた高すぎる査定に注意する
順にご説明します。
(1)自分で近隣の売り出し価格や成約事例を調べる
不動産会社に査定を依頼する前に、まずは自分で近隣の相場を調べておくことをおすすめします。
不動産ポータルサイトで同じエリア・類似条件の物件がどのくらいの価格で売り出されているかを確認するだけでも、おおよその価格帯が把握できるでしょう。
さらに、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」や「レインズマーケットインフォメーション」では、実際の成約価格を調べることも可能です。
売出価格と成約価格には差があることが多いため、成約事例を参考にすることでより現実的な相場観を持てるようになります。
(2)査定を依頼する不動産会社の候補を絞り込む
全国には数多くの不動産会社がありますが、すべての会社が売却を得意としているわけではありません。
賃貸仲介がメインの会社や売却実績が少ない会社に依頼すると、思うような成果が得られない可能性もあることに注意が必要です。
売却を得意とする不動産会社を見つけるには、一括査定サイトを活用する方法や地域で評判の良い会社を調べる方法があります。
このように、複数の候補をリストアップした上で、査定を依頼する会社を絞り込んでいきましょう。
(3)机上査定でおおよその価格帯を把握する
査定には、物件を見ずにデータのみで算出する「机上査定(簡易査定)」と実際に現地を訪問して行う「訪問査定」の2種類があります。
机上査定は、所在地や面積、築年数などの基本情報から概算価格を算出する方法で、結果が出るまでの期間が短いのが特徴です。
特に売却を検討し始めた段階で、おおよその価格帯を知りたい場合に適しているでしょう。
ただし、室内の汚れ具合やリフォーム履歴、日当たりなどの個別状況は査定価格に反映されないため、実際の売却可能価格とは乖離する可能性がある点は理解しておく必要があります。
(4)訪問査定で成約に近い価格を確認する
本格的に売却を進める場合は、訪問査定を受けることが一般的です。
訪問査定では、不動産会社の担当者が実際に物件を訪問し、日当たりや眺望、室内の状態、周辺環境などを確認したうえで査定額を算出します。
机上査定よりも精度が高く、実際に成約が見込める価格に近い査定結果が得られることが多いです。
また、訪問査定の際には、物件のメリットだけでなく気になる点やデメリットも正直に伝えることで、より正確な査定価格が算出されやすくなります。
(5)各社の査定額とその根拠を一覧で比較する
複数の不動産会社から査定結果が出揃ったら、各社の査定額を一覧にして比較検討します。
このとき、単に査定額の高さだけで判断するのではなく、その金額の根拠を確認することが重要です。
「なぜこの価格になるのか」、「どのような販売戦略で売却を進めるのか」といった説明を聞くことで、会社の信頼性や担当者の力量が見えてくるでしょう。
根拠が明確で、納得できる説明ができる不動産会社や担当者を選ぶことが、売却を成功させるための第一歩です。
(6)相場から大きく外れた高すぎる査定に注意する
査定額は高ければ良いというものではなく、相場から大きく外れた高すぎる査定には注意が必要です。
一部の不動産会社は、媒介契約を取りたいがために相場より高い査定額を提示することがあります。
しかし、高すぎる価格で売り出しても買主が見つからず、結果的に値下げを繰り返して売却活動が長期化するケースも少なくありません。
自分で調べた相場観と照らし合わせて、適正な価格かどうかを冷静に判断することが大切です。
4.【STEP3】不動産会社と媒介契約を結ぶ

査定結果を比較検討したうえで、不動産会社を選びます。
仲介を依頼する場合には、その不動産会社と媒介契約を締結します。
媒介契約の種類によって売却活動の進め方が異なるため、それぞれの特徴を理解したうえで選択することが重要です。
不動産会社選びと媒介契約に関するポイントは、以下の通りです。
- 売却実績や得意エリアで不動産会社を比較する
- 担当者の説明力や相性をチェックする
- 一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の違いを理解しておく
- 自分の状況に合う媒介契約の種類を選ぶ
- レインズ(不動産業者専用サイト)登録や活動報告の頻度を事前に確認する
それぞれについて解説します。
(1)売却実績や得意エリアで不動産会社を比較する
不動産会社を選ぶ際は、その会社の売却実績や得意とするエリアを確認することが大切です。
大手の不動産会社は知名度や広告力に優れている一方、地域密着型の会社はエリアの特性に精通しているという強みがあります。
売却したい物件のエリアや種別(マンション・戸建て・土地など)における実績を確認し、自分の物件に適した会社を選びましょう。
複数社を比較することで、各社の強みや特徴を把握することにもつながります。
(2)担当者の説明力や相性をチェックする
不動産売却は数か月にわたる取引になるため、担当者との相性も重要な判断材料になります。
具体的には、査定の根拠をわかりやすく説明してくれるか、質問に対して誠実に回答してくれるかといった点を確認しましょう。
専門用語ばかりで説明がわかりにくかったり、こちらの希望を聞かずに話を進めようとしたりする担当者は避けたほうがよいといえます。
信頼できる担当者と出会うことができれば、売却活動中の不安も軽減され、スムーズに進めることができるでしょう。
(3)一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の違いを理解しておく
媒介契約には3種類あり、それぞれ契約内容や不動産会社の義務が異なります。
| 項目 | 専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 |
| 依頼できる不動産会社の数 | 1社のみ | 1社のみ | 複数社に同時に依頼できる |
| 自分で見つけた買主と直接契約できるか | できない(必ずその不動産会社を通す) | できる(自分で見つけた相手と直接契約も可能) | できる |
| 契約期間の上限 | 原則3か月以内 | 原則3か月以内 | 法律上の上限なし(実務上は3か月前後が多い) |
| レインズ登録義務 | あり(契約後すぐに登録義務あり) | あり(専属専任よりは猶予あり) | 義務なし(登録するかどうかは各社の判断) |
| 売却活動の報告義務 | あり(おおむね1週間に1回以上の報告が必要) | あり(おおむね2週間に1回以上の報告が必要) | 法律上の義務なし(報告頻度は会社ごとの運用による) |
| 向いている人のイメージ | 1社と二人三脚で、できるだけ早く売りたい人 | 1社に任せつつ、自分でも買主を探したい人 | 自分も動きつつ、複数社を競わせて売却したい人 |
一般媒介契約は、複数の不動産会社と同時に契約することができ、自分で買主を見つけて取引することも可能です。
ただし、不動産業者専門の情報交換サイトである「レインズ」への登録義務や活動報告義務がないため、販売状況が把握しにくいというデメリットもあります。
専任媒介契約は、1社のみに売却を依頼する契約で、レインズへの登録(7営業日以内)と2週間に1回以上の活動報告が義務付けられています。
もっとも、専任媒介契約であっても、自分で買主を見つけた場合は、不動産会社を通さずに契約することも可能です。
これらに対して、専属専任媒介契約は、専任媒介契約よりもさらに制限が厳しく、レインズ登録は5営業日以内、活動報告は1週間に1回以上が義務となります。
自分で買主を見つけた場合でも、必ず契約した不動産会社を通して取引しなければなりません。
(4)自分の状況に合う媒介契約の種類を選ぶ
どの媒介契約を選ぶべきかは、売主の状況や希望によって異なります。
複数の不動産会社に競争させたい場合や自分でも積極的に買主を探したい場合は、一般媒介契約が適しているでしょう。
一方、忙しくて売却活動に時間をかけられない場合や、1社に任せてしっかりサポートを受けたい場合は、専任媒介契約や専属専任媒介契約が向いています。
いずれの契約も期間は最長3か月と定められているため、成果が出なければ契約満了後に見直すことも可能です。
(5)レインズ登録や活動報告の頻度を事前に確認する
専任媒介契約や専属専任媒介契約を結ぶ場合は、レインズへの登録が義務付けられています。
レインズに登録された物件は、全国の不動産会社で情報が共有されるため、買主が見つかる可能性が広がるでしょう。
また、契約時に活動報告の頻度や方法(メール・電話など)を確認しておくことで、売却活動の進捗を把握しやすくなります。
不動産会社による「囲い込み」を防ぐためにも、レインズの登録証明書を受け取り、自分で登録状況を確認できるようにしておくことがおすすめです。
5.【STEP4】売却活動(広告・内覧)を行う

媒介契約を締結したら、いよいよ不動産会社による売却活動が始まります。
特に広告掲載や内覧対応は買主の購入意欲に直結するため、売主としてもできる限りの準備をしておくことが重要です。
売却活動を成功させるためのポイントには、以下のものが挙げられます。
- 売出価格と値下げの許容幅を決めておく
- 広告・ポータルサイトの掲載内容を確認する
- 内覧前に掃除と整理整頓を徹底する
- タバコやペットなどの臭い対策を行う
- 物件のアピールポイントとデメリットを整理しておく
- 内覧時によく聞かれる質問への答えを準備する
順に見ていきましょう。
(1)売出価格と値下げの許容幅を決めておく
売出価格は、査定価格をベースに不動産会社と相談しながら決定します。
このとき、最終的にいくらまでなら値下げに応じられるかという許容幅を事前に決めておくことが重要です。
価格交渉は不動産売買で日常的に行われるため、交渉を見越して少し高めに設定する戦略もあるでしょう。
ただし、相場からかけ離れた高値で売り出すと問い合わせ自体が少なくなるリスクがあるため、バランスが大切です。
(2)広告・ポータルサイトの掲載内容を確認する
不動産会社が作成した広告やポータルサイトの掲載内容は、必ず自分の目で確認しましょう。
具体的には、掲載されている物件写真が暗くないか、間取り図に誤りがないか、アピールポイントが適切に記載されているかといった点をチェックします。
写真の質や物件紹介文の内容は、購入希望者の第一印象を左右する重要な要素です。
気になる点があれば不動産会社に修正や訂正を依頼し、物件の魅力が伝わる広告になるよう働きかけることが大切です。
(3)内覧前に掃除と整理整頓を徹底する
内覧は購入希望者に物件の魅力を直接アピールできる重要な機会です。
居住中の物件であっても、可能な限り掃除と整理整頓を徹底し、広くて清潔感のある印象を与えられるように準備しましょう。
特に玄関・水回り・リビングは購入希望者が注目しやすい場所のため、念入りに清掃することが望ましいです。
生活感を抑えるために、不要な荷物を一時的に収納したり、処分したりすることも効果的でしょう。
(4)タバコやペットなどの臭い対策を行う
臭いは内覧時の印象を大きく左右する要素であり、自分では気づきにくいものでもあります。
そのため、タバコやペットの臭いが染みついている場合は、消臭スプレーの使用やカーテン・カーペットの洗濯など、できる限りの対策を行いましょう。
内覧前に換気を行い、新鮮な空気を取り入れておくことも基本的かつ効果的な方法です。
臭いが気になる場合は、ハウスクリーニングを依頼することも検討してみましょう。
(5)物件のアピールポイントとデメリットを整理しておく
内覧の際には、購入希望者から物件についての質問を受けることがあります。
日当たりの良さや収納の多さ、周辺の利便性など、物件のアピールポイントを事前に整理しておくことで、スムーズに説明できるでしょう。
一方、デメリットについても把握しておくことが重要です。
隠していたつもりでも後から発覚すればトラブルになる可能性があるため、正直に伝えたうえで対応策を示すほうが信頼を得ることにつながります。
(6)内覧時によく聞かれる質問への答えを準備する
内覧時には、「なぜ売却するのですか?」や「近隣の住民はどんな方ですか?」、「騒音は気になりますか?」といった質問を受けることがあります。
これらの質問に対してスムーズに回答できるよう、事前に答えを準備しておくと安心です。
売却理由については、ネガティブな印象を与えないように伝え方を工夫することも大切でしょう。
例えば、「家族構成の変化で住み替えを検討している」など、前向きな理由であれば正直に伝えて問題ありません。
もっとも、「ローンの完済のため」などが理由の場合には、値下げ交渉がされるケースもあるため、注意が必要です。
どのような伝え方をすればよいのか判断が難しい場合には、不動産会社の担当者と相談し、伝え方を検討することもおすすめです。
6.【STEP5】条件交渉と売買契約を結ぶ(売主側の流れ)

購入希望者と価格や引渡しの時期などの売買に関する条件について合意に至ると、いよいよ売買契約を締結します。
売買契約時には、買主から手付金を受け取ることになります。
また、仲介業者と契約を結んでいる場合には、売主はこの時点で仲介手数料を支払う必要があります。
仲介手数料の支払い時期は会社によって異なりますが、売買契約時に半金、物件の引渡し時に残りの半金を支払うのが一般的ですが、引渡し時に一括で支払うケースもあります。
売買契約は法的な拘束力を持つ重要な手続きであるため、契約内容を十分に理解したうえで署名・押印することが欠かせません。
特に売主は売買契約当日に以下のポイントを押さえておきましょう。
- 重要事項説明で確認すべきポイントを事前に把握する
- 売買契約書の条項と特約内容を読み込んでおく
- 手付金の金額と取り扱いを確認する
- 引渡しの時期や残代金の支払期日を再確認する
- 契約後に変更しにくい事項を確認して署名する
これらの対応を誤ると、後に法的トラブルに発展する事態にもなりかねません。
そのため、慎重に対応を進めることを心がけましょう。
(1)重要事項説明で確認すべきポイントを事前に把握する
売買契約の前に、宅地建物取引士から「重要事項説明」が行われます。
重要事項説明では、物件の法的規制や設備の状況、契約解除に関する事項など、取引に関する重要な情報が説明されます。
当日に初めて内容を聞くと理解が追いつかないこともあるため、事前に重要事項説明書のコピーをもらい、目を通しておくことをおすすめします。
また、内容に不明点があれば遠慮なく質問し、納得・理解したうえで次のステップに進みましょう。
(2)売買契約書の条項と特約内容を読み込んでおく
売買契約書には、売買価格、支払条件、引渡しの時期、契約解除の条件など、取引の根幹となる事項が記載されています。
特に「特約事項」には、その取引固有の条件が記載されることが多いため、注意深く確認することが重要です。
例えば、設備の引渡しを行うための条件や契約不適合責任の免責範囲などが特約で定められることがあります。
契約後に「知らなかった」では済まされないため、不明点はすべて解消してから署名・押印するようにしましょう。
(3)手付金の金額と取り扱いを確認する
売買契約時には、買主から売主に手付金が支払われることが一般的です。
手付金の相場は売買価格の5〜10%程度とされており、契約成立の証拠としての役割があります。
手付金には「解約手付」としての性質があり、買主は手付金を放棄することで、売主は手付金の倍額を支払うことで契約を解除することができます。
ただし、相手方が「契約の履行に着手」した後は、手付解除ができなくなる点に注意が必要です。
例えば、買主が売主に対して、手付金のほかに売買代金の一部を内金などとして支払った場合には、売主は手付解除をすることができなくなることを押さえておきましょう。
(4)引渡しの時期や残代金の支払期日を再確認する
売買契約書には、物件の引渡しの時期と残代金の支払期日が明記されます。
これらの日程は買主のローン審査の進捗状況にも左右されるため、現実的なスケジュールになっているか確認しましょう。
また、売主が住み替えのために不動産を売却する場合には、新居への入居日との兼ね合いも考慮する必要があります。
日程に無理がある場合は、契約前に調整を申し入れることが大切です。
(5)契約後に変更しにくい事項を理解して署名する
売買契約を締結すると、契約内容を一方的に変更することは原則としてできません。
価格や引渡し日、設備の残置条件、契約不適合責任の期間など、重要な事項はすべて契約書に記載されるため、署名前に十分確認することが必要です。
そして、契約後に何らかのトラブルが発生した場合、契約書の内容に基づいて解決が図られることになります。
そのため、契約書の内容や条項に少しでも疑問があれば、その場で確認し、納得したうえで署名・押印するようにしましょう。
7.【STEP6】決済と物件の引渡しを行う

売買契約から1〜2か月程度経過した決済日に、残代金の授受と物件の引渡しを行います。
決済は金融機関などで行われ、売主と買主、不動産会社、司法書士が立ち会いのもとで実行されることが一般的です。
この日をもって不動産の所有権が買主に移転し、売却の手続きはほぼ完了です。
もっとも、決済・引渡しの当日にも押さえておくべきポイントはあります。
- 決済前にローン残高と清算金額を確認しておく
- 当日に必要な書類・印鑑・通帳をそろえる
- 残代金の入金を確認してから鍵を引き渡す
- 管理費や固定資産税などの日割り計算を確認する
順にご説明します。
(1)決済前にローン残高と精算金額を確認しておく
ローンが残っている場合は、決済日時点での正確な残高を金融機関に確認しておく必要があります。
売却する不動産にローンが残っている場合には、買主から支払われる残代金をもって残債を返済することが一般的です。
その場合には、不動産に設定されている抵当権の抹消登記手続を同時に行うことになるため、金額に誤りがあると手続きを進めることができなくなってしまいます。
また、仲介手数料の残金や司法書士への報酬など、決済時に支払う費用も事前に把握しておきましょう。
精算金額を一覧にしておくと、当日の流れがスムーズになります。
(2)当日に必要な書類・印鑑・通帳をそろえる
決済・引渡しの当日には、売主として準備すべき書類や持ち物があります。
主なものとしては、登記済権利証(登記識別情報)、実印、印鑑証明書、身分証明書、住民票、振込先の預金通帳などが挙げられます。
ローンを完済する場合は、金融機関から抵当権抹消に必要な書類(抹消書類)も受け取ることになるでしょう。
不動産会社や司法書士から事前に必要書類のリストが提示されるため、漏れなく準備しておくことが大切です。
(3)残代金入金を確認してから鍵を引き渡す
決済日当日は、通常、金融機関や不動産会社の事務所に関係者が集まって手続きを行います。
買主から売主の口座に残代金が振り込まれ、着金が確認できたら、物件の鍵を買主に引き渡します。
複製した鍵も含めて、すべての鍵を引き渡すのが原則です。
着金確認後に所有権移転登記の申請が行われ、登記簿上でも所有権が買主に移転することになります。
(4)管理費や固定資産税などの日割り精算を確認する
決済日を基準に、固定資産税や都市計画税、マンションの場合は管理費・修繕積立金などを日割り計算で精算します。
一般的には、決済日までの分を売主が負担し、決済日以降の分を買主が負担する形で精算金額を調整します。
精算金額は決済日の前に不動産会社から提示されるため、内容を確認しておきましょう。
この精算が完了すれば、不動産売却の手続きはほぼ完了です。
8.【STEP7】確定申告などの売却後の手続きを行う

不動産を売却して利益(譲渡所得)が発生した場合は、翌年に確定申告を行う必要があります。
一方、特例の適用により税金がかからない場合でも、特例を受けるためには確定申告が必要になるケースがほとんどです。
売却後に税金の計算や確定申告を行う際には、以下の点について把握しておきましょう。
- 譲渡所得が生じているかどうかを計算する
- 特別控除などの特例の適用可否を確認する
- 確定申告が必要なケースかどうかを判断する
- 申告に必要な書類をリストアップして準備する
なお、税金の計算は複雑であり、ご自身で進めることが難しいケースも考えられます。
そのような場合には、税理士などの専門家に相談することも検討しましょう。
(1)譲渡所得が出ているかどうかを計算する
譲渡所得は、売却価格から取得費(購入時の価格など)と譲渡費用(仲介手数料など)を差し引いて計算します。
計算の結果がプラスであれば譲渡所得が発生していることになり、原則として所得税・住民税の課税対象となります。
マイナス(譲渡損失)の場合は課税されませんが、他の所得と損益通算できる特例が適用される場合もあります。
なお、不動産の取得費のうち、建物価格の部分については、経過年数に応じた減価償却費を差し引く必要がある点に注意が必要です。
(2)特別控除などの特例の適用可否を確認する
マイホーム(居住用財産)を売却した場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
国税庁の規定によれば、この特例は所有期間の長短に関係なく適用されますが、「現在住んでいる家」または「住まなくなってから3年目の年末まで」に売却することなどが要件となります。
ただし、売却した年の前年および前々年に同じ特例を使っていないことや、親族への売却ではないことなど、複数の適用要件があります。
また、住宅ローン控除との併用ができないため、住み替えで新居を購入する場合はどちらの制度を活用するか検討が必要です。
(3)確定申告が必要なケースかどうかを判断する
譲渡所得がプラスの場合は、原則として確定申告が必要です。
3,000万円特別控除を適用して課税所得がゼロになる場合でも、特例の適用を受けるためには確定申告を行う必要があります。
一方、譲渡損失が発生した場合は確定申告の義務はありませんが、損益通算の特例を利用したい場合は申告が必要になるでしょう。
確定申告の期間は、売却した翌年の2月16日から3月15日(土日祝日の場合は翌営業日)までとなっています。
(4)申告に必要な書類をリストアップして準備する
確定申告に必要な書類は複数あり、事前に準備しておくことでスムーズに手続きを進めることができます。
主な必要書類としては、確定申告書、譲渡所得の内訳書、売買契約書のコピー、登記事項証明書、領収書類(仲介手数料など)が挙げられます。
なお、3,000万円特別控除の制度を利用する場合には、住民票の写しや戸籍の附票など、居住用財産であることを証明する書類も追加で必要です。
書類の準備には時間がかかることもあるため、早めに取りかかることをおすすめします。
9.不動産売却をスムーズに進めるための注意点

不動産売却は、途中でトラブルが発生すると売却が長期化したり、不利な条件で契約を結ばなければならなかったりする可能性があります。
売却をスムーズに進めるために売主が意識したいポイントは、以下の通りです。
- 売却完了までの期間の目安を理解してスケジュールを組む
- 高すぎる売出価格の設定と安易な値下げを避ける
- 不動産会社(担当者)や司法書士との連絡方法と頻度を決めておく
- 契約不適合責任の内容を理解したうえで情報提供を徹底する
- トラブル事例を参考にして同じ失敗を避ける
これらのポイントを押さえ、後悔のない取引を実現しましょう。
(1)売却完了までの期間の目安を理解してスケジュールを組む
不動産売却にかかる期間は、一般的に2~3か月程度が目安とされています。
ただし、物件の条件や市況、価格設定によっては半年以上かかるケースも珍しくありません。
特に住み替えや転勤など期限がある場合は、余裕を持ったスケジュールで売却活動を開始することが重要です。
事前準備から引渡しまでの各ステップに要する期間を把握し、逆算して計画を立てるようにしましょう。
(2)高すぎる売出価格の設定と安易な値下げを避ける
売出価格は高すぎても低すぎても問題があり、適正な価格設定が売却を成功させるための重要なポイントです。
相場より高すぎる価格で売り出してしまうと、問い合わせの件数自体が少なくなり、売却活動が長期化するリスクがあります。
もっとも、安易に値下げを繰り返すと、「売れ残り物件」という印象を与えてしまい、却って買い手がつかなくなる可能性もあることに注意が必要です。
最初から適正な価格で売り出すことが理想的ですが、一定期間経っても反応がない場合は、価格の見直しを検討する必要があります。
値下げのタイミングや幅については、不動産会社と相談しながら戦略的に判断することが大切です。
(3)不動産会社(担当者)や司法書士との連絡方法と頻度を決めておく
売却活動中は、不動産会社の担当者からの活動報告や内覧の日程調整など、頻繁に連絡を取り合うことになります。
連絡がスムーズに取れない場合には、商機を逃したり、トラブル対応が遅れたりする可能性があるため、注意が必要です。
そのようなリスクを回避するためにも、媒介契約時に連絡方法(電話・メール・LINEなど)や報告の頻度を確認しておくことがおすすめです。
また、決済・引渡し時には司法書士とのやり取りも発生するため、必要書類の準備など、事前に確認しておくべき事項を把握しておきましょう。
(4)契約不適合責任の内容を理解したうえで情報提供を徹底する
2020年4月の民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変更されました。
契約不適合責任とは、引き渡した物件が契約内容に適合しない場合に売主が負う責任のことです。
買主は追完請求(修補請求)や代金減額請求、損害賠償請求、契約解除といった権利を行使できるようになっています。
売主としては、物件の状態について正確に告知し、瑕疵がある場合は契約書に明記しておくことで、後のトラブルを防ぐことができるでしょう。
(5)トラブル事例を参考にして同じ失敗を避ける
不動産売却では、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
例えば、「引渡し後に雨漏りが発覚し、契約不適合責任を問われた」、「価格交渉に応じすぎて想定より大幅に安く売却してしまった」といったケースは珍しくありません。
また、「不動産会社の対応が悪く、売却活動が進まなかった」、「囲い込みをされていたことに気づかなかった」といった不動産会社に関するトラブルもあります。
過去のトラブル事例を参考にして、その事例と同じ失敗を避けるための対策を講じておくことが大切です。
不動産売却の成功事例や失敗事例を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
まとめ
不動産売却は、事前準備から確定申告まで、多くのステップを経て進む大きな取引です。
全体の流れを把握し、各ステップのポイントを理解しておくことで、スムーズかつ有利な条件での売却が実現しやすくなります。
特に重要なのは、信頼できる不動産会社(担当者)を選ぶこと、適正な価格で売り出すこと、内容を十分に理解した上で契約することの3点です。
また、契約不適合責任を避けるための正確な情報提供や、税金の特例を活用するための確定申告も忘れてはなりません。
この記事で解説した内容を参考に、計画的に売却活動を進めていただければ幸いです。
