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農地の売却が難しい理由とは?売却方法から流れ・売れないときの対処法まで解説

農地の売却は、農地法による規制があるため宅地よりも難しいとされていますが、ポイントを押さえて手続きを進めれば、農地を売却できないわけではありません。

この記事では、農地の売却が難しいといわれる理由や売却方法、具体的な流れ、売れないときの対処法まで詳しく解説します。

1.農地の売却が難しいといわれる理由

一般的に農地の売却は、宅地の売却よりも難しいといわれています。

その背景には、農地法による規制と農業をとりまく構造的な問題があります。

農地の売却が難しいといわれる理由

  1. 売買や転用には農地法上の許可が必要になる
  2. 買い手が原則として農業従事者などに限られる
  3. 農業従事者の減少で買い手自体が見つかりにくい

(1)売買や転用には農地法上の許可が必要になる

農地の売却が難しい最大の理由は、農地法上の許可が必要になる点です。

耕作目的で農地を売買・贈与・貸借する場合は、農地法第3条に基づき、農業委員会の許可を受けなければなりません。

また、宅地や駐車場など農地以外へ転用する目的で売買する場合は、農地法第5条により都道府県知事などの許可が必要です。

買い手の立場からすれば、複雑な許認可を伴う農地よりも、最初から宅地や商業用地を選んだほうが手間もかかりません。

こうした手続きの複雑さが、農地を売却しにくくしている大きな要因です。

(2)買い手が原則として農業従事者などに限られる

農地を農地のまま購入できるのは、許可要件を満たす個人や法人です。

すでに農業を営んでいる人だけでなく、新たに農業を始める人も対象になりますが、取得後にすべての農地を効率的に利用し、原則として年間150日以上農作業に常時従事するなどの要件を満たさなければなりません。

転用にも許可が必要である以上、農業をしない一般の買い手にとって農地を購入するメリットは小さく、需要は農業従事者に限定されるのが実情です。

(3)農業従事者の減少で買い手自体が見つかりにくい

農地の買い手候補となる農業従事者は、年々減少しています。

農林水産省の2025年農林業センサス(概数値)によると、令和7年2月1日現在の基幹的農業従事者(個人経営体)は102万1千人と、5年前に比べて34万2千人(25.1%)減少しました。

農業従事者の高齢化も進んでいるため、農地を手放したい人が増える一方で、農業の担い手は減り続けています。

買い手候補そのものが縮小している以上、農地の売却は今後より一層難しくなる可能性があるでしょう。

2.農地を売却する方法

農地の売却は難しいものの、売却方法がないわけではありません。

農地を売却する方法

  1. 農地のまま売る
  2. 農地を転用してから売る

それぞれの特徴を理解して、自分の農地に合った方法を選びましょう。

(1)農地のまま売る

最もシンプルなのは、農地を農地として売却する方法です。

買い手が農業従事者に限られるのがデメリットですが、農地の転用などの手続きが不要で、3条許可を得られれば農地を売却できます。

周辺に農地が多い地域や、規模拡大を検討している農家が近くにいる場合には有効な選択肢です。

ただし、需要が少ないエリアでは売却まで長期化するリスクもあるため、なかなか売れない事態も想定して、販売活動の期間や価格設定にはゆとりを持たせておきましょう。

(2)農地を転用してから売る

農地を宅地などへ転用してから売却する方法なら、買い手を一般の個人や法人にまで広げられます。

住宅需要が見込めるエリアであれば、農地のまま売るよりも高値で売却できる可能性があります。

ただし、転用を伴う売買には5条許可が必要で、許可申請などの手続きにより売却活動が長引く可能性があります。

また、市街化調整区域内の農地は、無秩序な開発を防ぎ農地や自然を保護する目的があるため、転用が許可されることはほとんどありません。

そのため、転用が認められる可能性があるかどうかを見極めたうえで手続きを進めるのが不可欠です。

3.農地を売却する流れ

農地の売却は、以下の四つのステップで進みます。

農地を売却する流れ

  1. 地目と立地を確認して売却方針を決める
  2. 買主を探して停止条件付き売買契約を結ぶ
  3. 農業委員会へ3条許可(農地のまま)または5条許可(転用)を申請する
  4. 許可が下りたら本登記と決済を行い売却を完了する

(1)地目と立地を確認して売却方針を決める

農地を売却するには、まず地目と立地を確認しましょう。

地目とは不動産登記法に基づく土地の種類であり、農地は主に田または畑に分類されます。

次に立地の確認ですが、市街化区域内の農地であれば原則として農業委員会への届出のみで転用でき、都道府県知事などの許可を受ける必要がありません。

市街化区域は、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき地域として定められており、農地であっても宅地などへの転用が想定されているため、許可が簡易化されています。

反対に市街化調整区域内や農用地区域内の農地は転用が認められにくいため、農地のまま売る方針が現実的です。

市街化区域外の農地については、農地法の立地基準による農地区分でも転用の可否が判断されるため、以下の表を参考にしてください。

農地区分 特徴 転用の可否
農用地区域内農地 農業振興地域整備計画で農用地区域とされた農地 原則不許可
甲種農地 市街化調整区域内の特に良好な営農条件を備えた農地 原則不許可
第1種農地 おおむね10ヘクタール以上の集団農地や土地改良事業の対象となった農地など 原則不許可
第2種農地 市街地化が見込まれる区域内の農地や生産性の低い小集団の農地 周辺の土地で目的を達成できない場合などに許可
第3種農地 市街地の区域内や市街地化の傾向が著しい区域内の農地 原則許可

自分の農地がどの区分に当たるかは、農地を管轄する農業委員会へ問い合わせると把握できます。

これらの情報を踏まえて、農地のまま売るか転用して売るかの方針を決めましょう。

(2)買主を探して停止条件付き売買契約を結ぶ

農地の売却方針が決まったら、不動産会社などを通じて買主を探しましょう。

購入の打診がきたら条件を話し合い、合意できたら停止条件付き売買契約を締結します。

停止条件付き売買契約とは、一定の条件が成立するまで法的な効力が発生しない契約です。

万が一、特約で定めた条件が成立しなければ、契約自体の効力は生じず、農業委員会の許可が下りてはじめて土地の引き渡しや代金の支払いに進めます。

(3)農業委員会へ3条許可(農地のまま)または5条許可(転用)を申請する

停止条件付き売買契約を締結したら、農業委員会の窓口へ農地法に基づく許可申請を行います。

すでに述べたように、農地のまま売る場合は3条許可、転用して売る場合は5条許可が必要です。

それぞれの内容と主な許可基準を、以下の表にまとめました。

区分 内容 主な許可基準
3条許可 耕作を目的として農地を売買・贈与・貸借する場合に必要な許可 ・全部効率利用要件(取得後、所有する農地のすべてを効率的に利用して耕作する)
・農作業常時従事要件(取得者やその世帯員が原則年間150日以上農作業に従事する)
・地域との調和要件(周辺地域の農業利用に支障を与えない)
・法人の場合の要件(売却の場合は原則として農地所有適格法人であること)
5条許可 農地を宅地などへ転用する目的で、売買・贈与・貸借などの権利移転や権利設定をする場合に必要な許可 ・立地基準を満たしている
・転用の確実性が認められる
・周辺農地への被害防除措置が取られている
・一時転用の場合に農地への原状回復が確実である

なお、かつて3条許可の要件だった下限面積要件は、法改正により令和5年4月1日に廃止されました。

現在は面積の大小によらず農地を売却でき、小規模な農地にもチャンスがあります。

申請書類の様式や添付書類は自治体ごとに異なり、必ず農地を管轄する自治体のホームページなどで確認しましょう。

また、許可が下りるまでは所有権移転の本登記ができないため、買主の権利を保全する目的で、許可を条件とする所有権移転の仮登記(条件付所有権移転仮登記)をするのが一般的です。

仮登記は停止条件付き売買契約の締結後、許可申請と並行して手続きでき、農地法の許可書がなくても申請できます。

(4)許可が下りたら本登記と決済を行い売却を完了する

農業委員会の許可が下りたら、所有権移転の本登記と売買代金の決済を行い、売却完了です。

農地の売買は許可がなければ所有権移転の効力が生じないため、必ず許可後に登記を進めることになります。

流れがやや複雑なため、手続きに不安がある場合は司法書士へ依頼して決済と同日に登記まですませましょう。

また、個人が農地を売却して利益が出た場合は、原則として譲渡所得に対する税金(所得税と住民税)がかかるため、翌年の確定申告も忘れずに行いましょう。

4.農地が売れないときの対処法

販売活動を続けても買い手が見つからないときは、次の三つの対処法を検討しましょう。

農地が売れないときの対処法

  1. 農地の売却に強い専門業者・買取業者へ相談する
  2. 農地中間管理機構や農業委員会のあっせんを活用する
  3. 相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう

(1)農地の売却に強い専門業者・買取業者へ相談する

農地がなかなか売れないときは、農地の取引実績が豊富な不動産会社や買取業者への相談が有効です。

農地の売買には許認可に関する知識が必要となり、一般的な不動産会社では対応が難しいケースもあります。

また、不動産の買取業者であれば、買い手を探す販売活動を経ずに直接売却できます。

農地の扱いに慣れている買取業者なら転売先の候補を持っていることも多く、転用を前提とした手続きについても専門家と連携しながら進めてくれる場合もあるでしょう。

仲介よりも価格は低くなりやすいものの、早期の現金化を優先したい場合に適した方法といえます。

(2)農地中間管理機構や農業委員会のあっせんを活用する

公的な仕組みを活用して、農地の買い手や借り手を探す方法もあります。

農地中間管理機構(農地バンク)は、高齢化や後継者不足によって耕作できなくなった農地を借り受けて、地域の担い手へ貸し出す仲介的な役割を持つ公的機関です。

売却ではなく賃貸ですが、農地を貸し出して収入を得ながら買い手を待つことができるのはメリットとなります。

地域によっては機構が農地を買い入れて、担い手へ売り渡す売買事業も運営している場合もあります。

また、農業委員会による売却先のあっせんも利用できます。

あっせん申出書を農業委員会へ提出すると、買受希望者を登録した名簿のなかから農業委員会が買い手候補を選定してマッチングを進めるため、自力で買い手を探す必要がありません。

このように公的機関を通じた農地の売却も可能なので、市町村の窓口や農業委員会へ相談してみましょう。

(3)相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう

相続した農地がどうしても売れない場合は、相続土地国庫帰属制度の利用も選択肢の一つです。

相続土地国庫帰属制度とは、相続などで取得した土地を法務大臣の承認を受けて国庫に帰属させる制度です。

利用には審査手数料として土地1筆当たり1万4,000円がかかるほか、承認後には原則20万円の負担金を納付します。

農用地区域内の農地など一部の土地では負担金が面積に応じて算定されるため、事前に法務局への相談が必要です(参考:法務省:相続土地国庫帰属制度の負担金)。

また、建物がある土地や担保権が設定された土地、境界が明らかでない土地などは引き取りの対象外です。

要件と費用を確認したうえで、売却やあっせんと比較しながら検討しましょう。

まとめ

農地の売却は、農地法による許可制度や買い手の少なさから、宅地よりも難易度が高いといわれています。

しかし、地目や立地を確認して適切な売却方針を立てれば、売却は十分に可能です。

農地のまま売る場合は3条許可、転用して売る場合は5条許可が必要となるため、停止条件付き売買契約を活用しながら手続きを進めましょう。

どうしても売れないときは、専門業者への相談や農地バンクの活用、相続土地国庫帰属制度といった対処法もあります。

まずは自分の農地の区分を確認するところから、売却への第一歩を踏み出してください。

監修者

塚田 拓士

不動産鑑定士

新卒で東京国税局に入局し、相続税の税務調査を担当しながら不動産鑑定士試験に合格。2007年にフィンテックグローバル(FGI)に入社し、事業再生、事業承継投資やPMI等を経験したのち、不動産M&Aによる投資事業を始め、FGIの主要事業に育てた。現在は不動産M&Aや投資商品の販売を推進している。