相続した不動産の査定は必要?評価方法・査定の流れ・注意点を徹底解説
「相続した不動産の価値がいくらなのか知りたい」
「査定方法の種類や特徴にはどんなものがある?」
相続した不動産の評価額は、相続税の申告、遺産分割協議、売却の検討といった場面ごとに、求められる算定方法が異なります。
この記事では、相続した不動産の四つの評価方法、査定が必要になる場面、査定の流れ、注意点を解説しています。
1.相続した不動産の査定とは

相続した不動産の査定とは、相続によって取得した土地や建物の価値を金額で算出する作業です。
ここで重要なのが、「査定」と「鑑定」、「評価」の違いです。
査定は不動産会社が無料で実施する「売却予想価格」を算出することであり、法的な効力は持ちません。
一方、鑑定は国家資格を持つ不動産鑑定士が「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づいて算出するもので、相続税申告や遺産分割調停などの公的な場面で証拠(※)としての効力があります。
評価は、例えば相続税の申告のための不動産の評価のことで、相続税法及び財産評価基本通達に評価方法が定められています。
相続した不動産の場合は単に売却を検討するだけでなく、税務申告や相続人間の協議といった目的も絡むため、場面によって両者を使い分ける必要があります。
(※)あくまで証拠であり、採用されるとは限りません。
2.相続した不動産の評価方法

相続した不動産の評価方法は、大きく四つに分けられます。
- 路線価(相続税評価額)から計算する
- 固定資産税評価額から算出する
- 不動産会社による査定(市場価格)を受ける
- 不動産鑑定士による鑑定評価を受ける
それぞれ算出する主体、目的、精度が異なるため、状況に応じて使い分けることが大切です。
(1)路線価(相続税評価額)から計算する
路線価方式は、国税庁が毎年7月に公表する路線価を用いて、相続税評価額を算出する方法です。
計算式は「相続税路線価 × 画地補正率 × 地積(面積)」となり、市街地の宅地評価で広く用いられます。
相続税路線価は公示価格の80%程度を目安に設定されているため、実勢価格より低めに算出されるのが一般的です。
路線価が定められていない市街化調整区域などの郊外の土地については、固定資産税評価額に地域ごとの倍率を乗じる倍率方式で評価します。
なお、路線価は主に相続税の申告時に使う評価方法であり、売却価格の参考にはあまり向いていません。
(2)固定資産税評価額から算出する
固定資産税評価額は、市町村(東京23区は東京都)が3年に一度評価替えを行う価格で、固定資産税や不動産取得税の算定基礎となります。
固定資産税評価額は公示価格の70%程度を目安に設定されており、毎年4〜6月に届く固定資産税の課税明細書で確認できます。
建物の相続税評価額は、原則として固定資産税評価額にそのまま1.0を乗じた金額ですが、土地の場合、倍率地域では「固定資産税評価額 × 倍率」で相続税評価額を算出します。
ただし、固定資産税評価額もあくまで税務上の評価であるため、実際の売却価格とは差が出る可能性がある点に注意しましょう。
(3)不動産会社による査定(市場価格)を受ける
不動産会社による査定は、実際に市場で取引される金額の目安を知るために最も有効な方法です。
過去の成約事例や周辺相場、最新の市況に基づき、「現時点でいくらで売れる可能性が高いか」を算出します。
なお、不動産会社による査定は原則無料で受けられ、売却を検討している場合や、遺産分割の参考に実勢価格を把握したい場合に向いている方法です。
ただし、査定結果には法的な効力がないため、相続税申告や調停などの証拠資料には使用できません。
(4)不動産鑑定士による鑑定評価を受ける
不動産鑑定士による鑑定評価は、四つの方法のなかで最も客観性と法的効力を持つ評価方法です。
裁判所への提出資料や相続税の更正請求、遺産分割調停の証拠など公的な場面で用いられます。
不動産鑑定士による鑑定評価では、以下の三つの方法を用いて適正な価格を多角的に算出します。
- 原価法
- 取引事例比較法
- 収益還元法
ほかの査定方法と異なり専門家による鑑定であるため、20万〜30万円程度の費用がかかるのが一般的であり、対象不動産の規模や種類によっては更に高額になる可能性もあります。
通常の売却検討であれば不要ですが、相続人間の意見が対立しているケースや、路線価と実勢価格に大きな乖離がある場合に利用することが有効と考えられています。
3.相続した不動産の評価が必要になる場面

相続した不動産の評価は、目的によって求められる評価方法が変わってきます。
代表的な三つの場面と、それぞれに適した評価方法を整理します。
- 相続税申告のための評価
- 遺産分割協議のための価格把握
- 売却を前提とした市場価格の査定
(1)相続税申告のための評価
相続税の申告の際に用いられるのが「路線価方式」または「相続税評価額」です。
相続税の計算は相続財産の総額から基礎控除を差し引き、その金額に応じて算出されます。
基礎控除は3,000万円+(600万円×相続人の人数)で、基礎控除額を上回る財産を相続する場合は、通常は相続が発生した日から10か月以内に相続税の申告が必要です。
この場合の査定は税理士に依頼して行うケースが一般的で、税理士が上記のデータに基づき、不動産の査定額を算出します。
(2)遺産分割協議のための価格把握
相続財産に不動産が含まれる場合は、不動産を現金化して相続人間で分割する「換価分割」や、一人が不動産を相続し、ほかの相続人に対して現金を支払う「代償分割」などが選択肢です。
そのため、遺産分割協議の際には相続した不動産の価値を正確に把握する必要があります。
相続人間での話し合いがスムーズな場合は、不動産会社の査定額をベースとして決めます。
しかし、相続人間で意見が割れて不動産の価格が争点になることも少なくありません。
そのような場合は、先述した不動産鑑定士による客観的な鑑定評価額を用いることになります。
(3)売却を前提とした市場価格の査定
相続した不動産を売却して現金化する場合は、不動産会社による査定を受けます。
机上査定で概算を知ったうえで訪問査定へ進み、複数社の結果を比較したうえで仲介契約を締結する会社を選ぶ流れです。
なお、相続した不動産を早く現金化したい場合には、不動産買取を選ぶほうが有利です。
4.相続した不動産の査定の流れ

相続した不動産の査定を受ける際の流れを解説します。
- 必要書類を準備する
- 不動産会社に査定を依頼する
- 机上査定で概算を把握する
- 訪問査定で正確な価格を確認する
- 査定結果を比較・検討する
特に換価分割や代償分割によって遺産分割を行う場合には、なるべく早期に売却することが必要になるので、早めに査定を依頼することがおすすめです。
(1)必要書類を準備する
相続した不動産の査定を受けるために、前もって必要書類を準備しておきましょう。
具体的には以下のような書類が必要です。
- 登記簿謄本
- 固定資産税納税通知書
- 公図
- 測量図
- 被相続人の戸籍謄本
- 遺産分割協議書(すでに作成している場合)
なお、名義変更(相続登記)が完了していない場合でも査定自体は受けられますが、実際の売却に進む際は2024年4月から義務化された相続登記の手続きが必須となります。
(2)不動産会社に査定を依頼する
書類が揃ったら、不動産会社に査定を依頼します。
相続した不動産は権利関係が複雑なケースもあるため、相続案件の取り扱い実績が豊富な会社を選ぶようにしましょう。
なお、不動産会社の査定は無料ですが、不動産会社にとっては売却による手数料収入を得るためのサービスです。
したがって、査定後に営業を受けることになりますので、その対応の手間がかかることは理解しておいたほうがいいです。
特に、複数の不動産会社に査定を依頼する場合には注意が必要です。
(3)机上査定で概算を把握する
机上査定では、物件情報や周辺の取引事例から、不動産会社の担当者が概算価格を算出します。
訪問の手間がかからず、メールや電話で結果を受け取れるため、遠方に住んでいる場合でも気軽に依頼できる点が魅力です。
複数社の机上査定結果を見比べて、訪問査定に進む候補を絞り込みましょう。
(4)訪問査定で正確な価格を確認する
机上査定で候補を絞ったら、訪問査定を依頼します。
訪問査定は担当者が現地で建物の状態、敷地の境界、周辺環境などを直接確認するため、机上査定よりも精度の高い価格が提示されます。
なお、所要時間は1時間程度で、結果が手元に届くまでには数日〜1週間が目安です。
売却を急いでいる場合は、このタイムラグも計算したうえでスケジュールを決めておきましょう。
(5)査定結果を比較・検討する
複数社の訪問査定結果が揃ったら、査定額・査定根拠・販売戦略・担当者の対応を総合的に比較します。
相続不動産の場合は相続人全員で結果を共有し、売却するか保有するか、誰がどの不動産を取得するかといった意思決定の材料として活用しましょう。
5.相続した不動産に適正な査定額がつくためのコツ

相続した不動産が適正な額で査定されるためには、以下の三つを意識してみましょう。
- 査定前に物件の清掃・整理をしておく
- 複数社に依頼して査定額を見極める
- 相続した不動産に強い不動産会社を選ぶ
(1)査定前に物件の清掃・整理をしておく
相続した不動産が古い場合は、事前に清掃や整理をしておくのがおすすめです。
被相続人が長期間住んでいた家は家財道具が残っているケースも多く、室内が散らかっていると査定担当者が建物の状態を正しく評価しにくくなります。
部屋が片付いて清掃されているだけで、物件の印象が良くなり査定額にプラスの印象が出る場合があります。
最低限の片付けと換気をしておくだけでも、印象は大きく変わるでしょう。
(2)複数社に依頼して査定額を見極める
相続した不動産の査定額を高めるには、複数社に依頼して査定額を見極めるようにしましょう。
1社のみの査定では、提示された金額が市場の相場感に合っているか判断がつきません。
その点、3社程度に依頼すれば価格の妥当性や各社の販売戦略などを総合的に比較できます。
なお、査定結果が会社ごとに大きく乖離することもあります。
その場合は、査定額の根拠を丁寧に説明できる会社を選ぶようにしましょう。
(3)相続した不動産に強い不動産会社を選ぶ
遺産分割等の問題を抱える場合には、相続した不動産の取り扱い実績が豊富な不動産会社を選ぶのが重要です。
例えば、相続専門の窓口を持つ会社や、税理士や司法書士と提携している会社であれば、売却以外の手続きもワンストップで進められる可能性があります。
ウェブサイトで相続事例の掲載状況を確認したり、初回相談で相続関連の質問をしたりすると見極めやすいでしょう。
6.相続した不動産の査定についての注意点

相続した不動産の査定では、通常の不動産売却にはない注意点があります。
- 共有名義や未登記の不動産は査定前に確認が必要
- 空き家・古家付き土地は解体費用が差し引かれる可能性がある
- 査定額と実際の売却価格は異なる
(1)共有名義や未登記の不動産は査定前に確認が必要
相続した不動産の査定を受ける前に、必ず名義や登記情報を確認しましょう。
古い物件だと名義変更がされていないままになっているケースなどもあります。
また、被相続人と相続人以外の人の共有名義になっているような場合もあります。
共有名義となっている不動産は、売却などを行う際には原則として共有者全員の同意が必要となり、一人でも売却に反対した場合には売却を進めることができません。
不動産の登記は謄本を見てみなければ、正しい情報を把握することは難しいため、売却が可能な状態なのかを必ずチェックしましょう。
(2)空き家・古家付き土地は解体費用が差し引かれる可能性がある
被相続人が居住していた住宅が築年数の経過した古家の場合、買主が建物を取り壊し、土地として活用する場合があります。
この場合は、査定額から解体費用に該当する金額が差し引かれる可能性があります。
解体費用は木造で1坪あたり数万円が目安であり、アスベストを含んでいる場合や、坪数が大きい場合は1,000万円を超える場合もあり、一般的な相場と言われる価格よりも低い金額での査定になることもあるでしょう。
(3)査定額と実際の売却価格は異なる
査定額は実際の売却価格ではありません。
あくまで不動産会社が過去の実績や経験から割り出した予想値であり、その金額で売れると確約されたわけではないことを理解しておきましょう。
売却価格は買主との交渉や市場の変化で変動します。
相続税の申告前に不動産を現金化したいという場合は、市場価格よりもやや安めに売り出しておくか、買取業者に買い取ってもらうなどの選択肢も検討しましょう。
7.相続した不動産の査定に関するよくある質問

相続した不動産の査定に関する代表的な疑問にお答えします。
- 査定にはどのくらい費用がかかりますか?
- 相続税申告の評価と売却査定は別物ですか?
(1)査定にはどのくらい費用がかかりますか?
相続した不動産の査定費用は、査定の種類によって異なります。
不動産会社による査定であれば机上査定・訪問査定ともに無料(アスベストの調査が入る場合は有料です)です。
一方で、不動産鑑定士による鑑定評価には20万〜30万円程度の費用がかかるのが一般的です。
(2)相続税申告の評価と売却査定は別物ですか?
相続税申告のための評価と売却査定は、目的も金額も異なります。
相続税申告では国税庁が定める「相続税評価額」(路線価方式または倍率方式)を用い、公示価格の80%程度の水準となる一方で、売却査定は不動産会社が市場価格を予想したもので実勢価格に近い金額となるため、相続税評価額より高くなるのが一般的です。
両者の差を理解しないまま遺産分割協議を進めると、相続人間の認識にズレが生じる原因となるため注意しましょう。
まとめ
相続した不動産の査定には、路線価・固定資産税評価額・不動産会社の査定・不動産鑑定士の鑑定評価という四つの方法があります。
相続税申告には路線価方式、遺産分割協議には不動産会社の査定や鑑定評価、売却検討には不動産会社の市場査定というように、目的に応じて使い分けることが大切です。
特に相続した不動産は共有名義や未登記、相続登記の義務化など特有の問題が多いため、相続案件に強い不動産会社を選ぶのが重要です。